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FM TOWNS SN のアルミ電解コンデンサを交換する


世の中、大抵のものには寿命が存在します。

これは電子部品も例外ではない訳ですが、特にアルミ電解コンデンサは寿命が短い傾向にあります。

寿命といっても、いわゆる容量抜けならば良いほうで、封止ゴムの劣化で液漏れし、短絡事故や基板の腐食を発生させ、機器を再起不能に追いやる事もあります。特に世間一般でいう所の「四級塩電解コンデンサ」と呼ばれるもの ( 厳密には 4 級塩という表記が正解のようですが、この記事では広く使われている呼び方に合わせて表記します ) の中で未対策品は、高確率で液漏れします。

この四級塩電解コンデンサは、製造時期から見て FM TOWNS SN に使用されていてもおかしくありませんし、例え使われていないとしても液漏れしない、とは限りません。

FM TOWNS SN も既に製造から 20 年以上経過しています。さすがにアルミ電解コンデンサを更新しようと思い立って実際に交換しましたので、その際に行った交換部品を選定する手法の忘備録を公開します。


アルミ電解コンデンサの選び方

まずアルミ電解コンデンサ ( 以下、電解コン ) を交換する際の要点を記載します。交換用の電解コンは、極力特性を合わせてください ( 特性が異なるものを使用してもいいですが、他の部品と整合があっていることを確認してください。 ) 

主に確認するのは、使用電圧 ( リプル電圧 ) 、静電容量、極性、リプル電流、使用温度です。必要な性能を満たさない電解コンを使うと、機器が故障することがあります。 ( 動作が安定しない、液漏れによる短絡、異常発振など ) 

これに加えて、基板上や電源ユニットの高周波トランス二次側の電解コンは ESR ( 等価直列抵抗 ) を、電源ユニットの高周波トランス一次側の電解コンはタンジェントデルタを、既存のもの以上の性能を有する品種 ( つまり、数値が同等もしくは低いもの ) でなるべく近いものを選定してください。これらの数値が高い場合は、電解コンの自己発熱による短寿命化に、低すぎる場合は過大な突入電流による機器の故障を招きます。

電解コンの形状には各種ありますが、チップ形、リード形、基板自立形が使用されています ( ネジ端子形というのもありますが、私は今のところ電子機器で用いられているのを見かけたことがありません ) 。基板ではチップ形とリード形が、電源ユニットではリード形と基板自立形が主に使われます。

既存の電解コンがリード形、基板自立形の場合、大抵はメーカー名と品種名が書いてありますので、それを頼りに納入仕様書 ( データシート ) を入手して特性を確認しましょう。納入仕様書がなくても、カタログに代替推奨品が記載されていることもあります。

チップ形の電解コンを交換するとき、多くの場合は入手性や実装の手間を考慮してリード形へ置き換えることが多いと思いますが、リードを加工するときは封口ゴムのシール性能を損なわないよう ( ストレスを与えないよう ) にリード線を加工するよう心がけてください。


電解コンデンサ撤去のコツ

電解コンを撤去する場合、リード形の電解コンの場合は基板の熱容量やスルーホール、端子部の加工などを考慮する必要があるものの、そこまで難しくは有りません。

しかしチップ形の電解コンでは、作業手順を考慮しないとパターンを剥がしてしまうなど基板を傷めてしまいます。基板を無意味に傷める事は誰も歓迎しないと思いますので、基板を極力傷めずに電解コンを撤去する参考手順を以下に示します。

基板の清掃を何度かに分けていますが、これは電解液の焦げ付きによる清掃の手間を回避する為です。まとめて清掃する場合は、省略して構いません。

面実装電解コンデンサの撤去手順
参考写真 説明文

参考写真-1

面実装電解コンデンサの一例。写真ではわかりにくいですが、電解コンデンサの端子のハンダが他の端子のハンダと比べて若干輝きが鈍い事から、液漏れが起きている事が疑われます。

参考写真-2

仮に綿棒と洗浄液 ( アルコールなど ) を用いて端子のハンダや基板を拭って、綿棒が緑色っぽく変色したら液漏れしていると考えて良いでしょう。

参考写真-3

ニッパーを使ってアルミケースの上部を切断し、撤去します。この時、面実装電解コンデンサの 2 本の端子を結ぶ直線とニッパーの刃先を出来るだけ平行にすると、基板のパターンを傷める確率を下げる事が出来ます。

参考写真-4

アルミケースを切断したところ。この後、ピンセットなどを用いてアルミケースの残っている部分を取り除きます。

この時、端子の部分を必要以上に引っ張らないよう、慎重にアルミケースや封口ゴムを撤去して下さい。無理に引っ張ると基板を傷める原因になります。

参考写真-5

アルミケースを撤去したところ。この状態では台座を取り除く事が出来ませんから、端子の太い部分 ( アルミ製の部分 ) を切断します。

参考写真-6

端子を取り除いたのち台座を撤去しますが、取り外せない場合は端子の太い部分が残っている可能性が有りますので、もう一度、端子の撤去を試みてください。

参考写真-7

台座を取り除いたところ。まだ端子のハンダ付けされた部分が残っていますが、ハンダゴテによる焦げ付きを防止する為、基板上に付着している電解液を綿棒と洗浄液などを用いて極力取り除きます。

参考写真-8

電解液を取り除いてからハンダゴテを用いて基板上に残っている端子を撤去し、劣化したハンダを除去してから再度清掃したのち、交換用の電解コンデンサを設置します。


四級塩電解コンデンサの何がいけないのか

冒頭で書いた「四級塩電解コンデンサ」について、少し記載しようと思います。

世間一般でいう所の四級塩電解コンは、電解液の主剤となる溶質に 4 級アルキルアンモニウム塩、基剤となる溶媒にブチロラクトンを用いた長寿命な電解コンデンサとして、主に 80 年代後半から 90 年代前半に製造され、2000 年頃まで各コンデンサ製造メーカーから出荷、流通していました。

開発当時の状況が分かる資料を未だ発見していないため、正確な経緯は不明なものの、どうやら当初は、電解液に強塩基性の成分が含まれていても全体としては中和された状態なので問題なし、と判断されていたようです。

しかし実際に生産を開始してみると、通電の有無とは直接関係する事なく、電解コンの陰極側リード線の周辺に塩基性の成分が偏在化してしまう状態となり、結果、劣化してシール性能が保てなくなった封口ゴムの陰極側から、電解液が漏れ出す事故が多発する事態となりました。

液漏れが発覚し始めた時点 ( 一説には 93 年頃から ) で、各コンデンサ製造メーカーは封口ゴムをブチルゴム ( 止水性能が比較的優れてはいますが、完璧では有りません。完璧な止水が可能なら、防水層、ハンドホール、外壁側の金属建具の四方枠やピットのスリーブなどの止水に苦労しません。 ) がベースの素材へ変更するなどの対策を行ったようです。

しかし被害の大きさや、部品を組み立てて製品を販売するメーカーはもちろん、需要家側でも四級塩電解コンの使用を禁止 ( たとえば NTT ) する動きが出た事も影響したのか、各コンデンサ製造メーカーでは順次、溶質を 4 級化イミダゾリニウム塩に変更した品種へ切り替えていったようです。

なお四級塩電解コンの液漏れを放置した場合、まずは基板の腐食が進行していきます ( 参考写真-9参考写真-10 ) 。参考写真では分かりにくいですが、よく見るとハンダ表面の劣化、スルーホールやパターンの腐食が見受けられます。 ( 「5F1」の電解コンデンサ左側、「1F1」の電解コンデンサ右下側のスルーホールに付着する青い結晶のようなものは、液漏れした二次電池の電解液と思われます ) 

四級塩電解コンの液漏れは最終的に基板表層のパターンの断線 ( 参考写真-11、表面的に断線は見受けられなくても、漏れた電解液が侵入している基板と絶縁シートの間の部分で断線の可能性があります ) 、もしくはスルーホール ( 参考写真-12、写真は二次電池による被害の例 ) 、基板の焼損 ( 参考写真-13 ) を招きます。

液漏れ被害は、発覚した段階で早急に対処する事をお勧めします。時間が経過してから交換しようとすると、電解液の清掃や基板の点検に余計な手間が掛かりますし、交換時に基板を破損させる確率が高まります。

四級塩電解コンかどうかは、品種名で判別できます。たとえば日本ケミコンは品種名の末尾に F が入る、Panasonic は品種名に HF が入る、ELNA は品種名に RS が入る電解コンは、一般的に四級塩電解コンである可能性が高いようです。

余談ですが、80 年代後半から 2000 年頃までに製造された電子機器や、電力用途のうち監視や制御に用いる機器全般は当然ですが、自動車の ECU のようなものでも問題の電解コンが用いられている報告もあります。対象となる年代の車種を所有するオーナーさんで末永く乗りたい方は、ECU のメンテナンスをお勧めします。


おまけ

おまけと書いていますが、どちらかというとこちらのほうが本題です。この場に内容をすべて記載すると大変見辛くなってしまいますので、電解コンの種類と数量を記載した一覧表の表計算ソフト用データを公開します。

製造時期やロットにより電解コンの仕様や数量が異なる事が考えられますので、必ずご自分で現物を確かめてから部品の発注と交換を行ってください。

FM TOWNS SN の数量調書 ( Excel形式 ) 
PC-H98 U90-002 の数量調書 ( Excel形式 ) 
PC-H98-U03 の数量調書 ( Excel形式 ) 
PC-9801 LV の数量調書 ( Excel形式 ) 

数量の記録は残っていませんが、FM R 50 CARD の AC アダプターで、Panasonic HFQ を日本ケミコン LXZ へ、Panasonic NHE ( 表記は GE ) をニチコン PS ( 旧 PR ) へ置き換えた記憶があります。

またこの他の機種のうち、一部については工作室の記憶様の「マザーボード上の四級塩電解コンデンサの交換」という記事で公開されていますので、そちらをご確認ください。


参考

電解コンを置換える際は、特性を合わせる事が原則です。これを考えると、置換え用の電解コンを探し出す為には各メーカーのカタログや納入仕様書から「瞳逸らさない君 ( きみ ) 」という状況を作り出して手間をかける必要が有りますが、あまりにも大変です。

そこで「あなたの選択は概ね正解です。」となるよう、目安となる代替品が判明した特定品種の電解コンデンサについて、以下に参考の一覧表を作成しました。あくまでも目安であり、耐圧や容量などでも置換えの可否が異なりますので、最後はご自身で納入仕様書を確認し採用の可否を決定してください。

電解コンデンサ代替品一覧表
既存の電解
コンデンサ
代替品の電解コンデンサ
日本ケミコン
LXF
  • 日本ケミコン
    LXY 、LXZ 、LXV ( ※1、※2 ) 
  • ニチコン
    UPW
  • 東信工業
    UTWRZ 、UTWKZ 、UTWXZ 、UTWYZ
  • ルビコン
    YXG 、YXH
日本ケミコン
SXF
  • 日本ケミコン
    LXV ( ※1 ) 
  • 東信工業
    UTWKZ
日本ケミコン
SXE
KMF
  • 日本ケミコン
    KY 、LXV ( ※3 ) 
  • ニチコン
    UPW
  • 東信工業
    UTWRZ 、UTWKZ 、UTWXZ 、UTWYZ
  • ルビコン
    YXG 、YXH
日本ケミコン
KME ( ※4 ) 
  • 日本ケミコン
    KMG ( ※3 ) 
  • ニチコン
    UVZ
  • 東信工業
    UTWE
  • ルビコン
    PX
  • ELNA
    RJ3
Panasonic
FA-A
HFE-A
HFG-A
HFQ-A
  • Panasonic
    FC-A ( ※5 ) 
  • 日本ケミコン
    LXZ
  • ニチコン
    UPW
  • 東信工業
    UTWRZ 、UTWKZ 、UTWXZ 、UTWYZ
  • ルビコン
    YXG 、YXH
Panasonic
HFZ-A
  • Panasonic
    FC-A ( ※5 ) 
  • 日本ケミコン
    KZM ( ※6 ) 
  • ルビコン
    ZL 、ZT ( ※6 ) 
    ZLJ ( ※7 ) 
Panasonic
NHE-A
  • Panasonic
    NHG-A ( ※5 ) 
  • 日本ケミコン
    KZE
  • ニチコン
    UPW
  • 東信工業
    UTWXZ
  • ルビコン
    YXG 、YXH
Panasonic
SU-A
 ( ※8 ) 
  • Panasonic
    M-A ( ※9 ) 
ニチコン
LQ
  • ニチコン
    LS ( ※10 ) 
  • ※1
    日本ケミコンが 1999 年頃製作したと思われるカタログにて記載されていた、代替推奨シリーズ。
  • ※2
    日本ケミコンの 2013 年度版カタログによれば、代替推奨シリーズは LXY シリーズのみとなっている。
  • ※3
    日本ケミコンの 2013 年度版カタログにて記載されていた、代替推奨シリーズ。
  • ※4
    日本ケミコンが現在製造している両極性の品種とは異なる、過去に製造されていた有極性の旧品種。
  • ※5
    Panasonic の公式ウェブサイトより。
  • ※6
    インピーダンス特性値を極力近づける場合。
  • ※7
    耐リプル電流特性値を極力近づける場合。
  • ※8
    Panasonic が現在製造している両極性の品種とは異なる、過去に製造されていた有極性の旧品種。
  • ※9
    この記事を作成した時点で Panasonic の公式ウェブサイトからは資料が削除されていた為、InternetArchive を用いて、過去に Panasonic の公式ウェブサイトに掲載されていた内容を確認。
  • ※10
    ニチコンの公式ウェブサイトに掲載されている一覧表より。

電解コンを置換える際、どうしても既設の電解コンと同等サイズの物が見つからない場合が有ります。そういう時は電解コンを MLCC ( 積層セラミックコンデンサ ) へ置換える方法も有りますが、特性の違いを考慮する必要が有ります。

 MLCC を製造するメーカーから技術資料が出ていたりしますので、それを参照してください。一例として、TDK 株式会社の資料を提示します。
電解コンデンサから MLCC への置き換えガイド


参考文献
活躍する三洋化成グループのパフォーマンス・ケミカルス91
 ( http://www.sanyo-chemical.co.jp/pr/pdf/pk91.pdf ) 
80年代末期の“亡霊”に注意、現代の修理業務でも遭遇率高し
アルミ電解コンデンサー (8) ―― 市場不良と四級塩問題 (1/4) - EDN Japan
アルミ電解コンデンサにおけるマイナス端子側塩基性成分の集中メカニズム
宅内情報通信装置用外部電源の電気安全に関するテクニカルリクワイヤメント


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