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EPSON 98 互換機用 SMD-1000 を PC-9821 で使用する


もくじ

はじめに

今回、セイコーエプソン株式会社製 FDD である SMD-1000 を PC-9821 で使用できるか実験を行いました。実験に使用した本体は PC-9821 Ls12 です。

実験の結果、基本的には使用出来る事が分かりましたが、使用にあたり変換基板の準備と FDD 本体の改造が必要だと分かりました。以下に、その内容を記載します。


変換基板

最初に用意するのは変換基板です。変換基板は「PC-9821 に 5.25 型 FDD を接続する」に掲載している「FDD インターフェイス変換基板回路図」を元に図面を一部変更し、34 ピン端子のうち、1 番ピンの 360/300 信号はどこへも接続せず、7、9、11 番ピンは GND へ接続せずに、+5V を供給します。


ヘッドロード機構について

次に FDD 本体の改造です。改造と言っても大した内容ではありません。ただ単に FDD 内部のヘッドロード機構 ( FD アクセス時以外は、ヘッドをディスク表面から浮かして、ヘッドやディスクの摩耗を抑制する機構 ) を無効化するだけです ( Ls12 は Head Load 信号を持たず、SMD-1000 を接続する場合は、何らかの方法でヘッドロード機構を無効化する必要が有ります ) 。

こういう時は、超簡易的な処理方法として 34 ピン端子の中に有る Head Load 信号ピン ( PC-98x1 においては 4 番ピン ) を GND へ接続する事で、ヘッドを強制的にディスクへ接触させる方法があります。詳細はもしかしたら開発室様の「色々な5インチFDDをAT互換機に付けてみる」という記事を参照して下さい。

しかし、この方法を手元にある SMD-1000 へ実際に適用してみた所、2 台のうち 1 台は FD へアクセスできず、もう 1 台はアクセスは出来る物の、ヘッドロード機構がチャタリングを起こしてしまいました。よって、SMD-1000 を分解してヘッドロード機構そのものを停止させる事にしました。

本来は SMD-1000 に備わっている動作設定用のジャンパを弄れば、ヘッドロード機構を無効化できる気もしますが、手元に資料が無くジャンパの詳細な設定内容および方法が不明な事、万が一、ジャンパに終端抵抗の設定に関わる部分が含まれていると、誤って SMD-1000 を破損させる可能性もある為、詳細な調査は行っていません。


改造方法

SMD-1000 のヘッドロード機構の無効化について、その方法を以下に記載します。

SMD-1000 のヘッドロード機構を無効化する方法
参考写真 説明文

参考写真-1

ヘッド周辺。右側にあるヘッドロード機構を無効化する為、左側の端子に差さっている FFC ( 1 か所 ) を取り外します。

参考写真-2

FFC を取り外した所。

参考写真-3

FFC を取り外しただけでは、ヘッドが浮いた状態のままですので、これを解除します。

参考写真-4

先ほど取り外した端子の反対側に、ヘッドロード機構を動かす為のソレノイドが有ります。このソレノイドを手動で操作し、写真中央部にあるツメを回転させ、ツメを反転させる事でヘッドロード機構によるロックを解除します。

参考写真-5

ソレノイドの内側にあるツメを操作する為に、ソレノイドの外側へ延長されている軸棒を回転させます。

参考写真-6

ソレノイドの軸棒を、時計回りへ 180 度回転させます。

参考写真-7

ツメを反転させるとヘッドロード機構によるロックが解除され、ヘッドが FD のディスクと常時接触する状態になります。

参考写真-8

最後にドライブ番号を設定します。写真ではドライブ番号が DS1 の設定となっていますが、Ls12 では DS0 と設定する必要が有るので、写真に写るジャンパのうち、一番右下の物を取り外します。

デスクトップ機などで、2 台目として使用するような場合はこのままの設定で大丈夫です。

参考写真-9

取り外したジャンパを、90 度左へ向けて再取付します。これでドライブ番号が DS0 となり、Ls12 で使用可能になります。

参考写真-10

なお、今回使用した SMD-1000 は電解コンデンサを交換しています。写真は電解コンデンサを交換する前のもので、オリジナルの電解コンデンサは、写真右側 C2 が日本ケミコン SXF シリーズ 16V 120μF、写真左側 C3 がルビコン 50V 10μF です。

参考写真-11

電解コンデンサ交換中の写真。事前に行った調査の結果、四級塩電解コンデンサである日本ケミコン SXF シリーズの液漏れが激しい事が分かり、周辺の部品を取り外して清掃を行う羽目になりました ( トラック 0 センサーの位置ズレ防止の為、基板を FDD の筐体に取り付けたまま行いました ) 。

C2 は表面が腐食していたものの、スルーホール内部は無事だったり、部品取り外しの際はパターンを剥がさずに済むなど、運の良さに恵まれました。

参考写真-12

電解コンデンサ交換後の SMD-1000。交換後は、C2 が東信工業の UTWRZ シリーズ 25V 100μF、C3 が同じく東信工業の UTCX シリーズ 50V 10μF です。


Density 信号について

EPSON 98 互換機用の FDD の場合、Density 信号をそのまま使用する場合と反転させるあ場合と有りますが、SMD-1000 に関しては反転する必要は有りませんでした ( 反転させると、かえって FD へアクセス出来なくなる ) 。

なぜこのような違いが有るのか、そしてどの FDD の場合に反転させる必要があるのかの全容は不明ですが、特定の FDD については工作室の記憶様の「エプソン98互換機本体−内蔵FDD対応表」および「エプソン98互換機の内蔵FDDのDensity信号」という記事を参照してください。

余談ですが、SMD-1000 で 2DD 形式の FD へアクセスする場合、Density 信号の反転させる、させないに関わりなく、アクセス可能でした。もしかすると、2DD だと SMD-1000 が判断した時点で、Density 信号に関わりなく動作が固定されるのかもしれません。


参考文献


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