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PC-9821 に 5.25 型 FDD を接続する


もくじ

はじめに

本体にわざわざ PC-9821 を使うならば、AT 互換機に 5.25 型 FDD を接続した方が早いのでは ? と言う疑問もありますが、 PC-9821 と AT 互換機ではフォーマットに違いがある為そのままでは PC/AT 互換機で読み込む事はできません。これは歴史的経緯により、物理フォーマットに違いがある為です。

Special thanks!!!

この記事は、エマティなリサイクル様の掲示板記事No.1329 FD1238Tピンアサイン等 ( 再掲 ) 、記事No.15628 FD1155C総合スレッドの('A`;)様、総額7600円様、まりも様、tsh様、HAMLIN様、KAZZEZ様、AP様、掲示板を提供してくださったエマティ様など、皆様のご指導、ご協力により完成しました。ご指導、ご協力してくださった皆様に、感謝の意を表します。


歴史的経緯

話は 8 型FD の時代にまで遡ります。

最初期の PC-9800 シリーズでは外付けの 8 型 FDD が接続できました。PC-9800 シリーズの 8 型 FD の物理フォーマット形式は所謂 IBM 形式と同等の仕様だったようです。 ( セクターサイズ 256byte、セクタ数 26、シリンダ数 77 ) 

時代が下るにつれて、5.25 型 FD や 3.5 型 FD へ移行していきますが、媒体が変わっても互換性を保てるようにする為か、物理フォーマット形式は 8 型 FD の延長線上にある形式が採用されました。

PC/AT 互換機の場合は、少々事情が異なります。PC/AT 互換機の元祖である IBM PC では、最初から 5.25 型 FD が採用されました。

5.25 型 FD は開発時に、FDD のヘッド部を 8 型 FDD 用の機構を流用したような仕様としつつ容量を確保しようとしたため、結果として 8 型 FD と互換性がない物理フォーマット形式 ( セクターサイズ 512byte、シリンダ数 35 ) となりました。

後に少しでも簡単に容量を稼ぐ為に、 5.25 型 FDD のヘッドの可動範囲及び、FD のウィンドウ部分を拡大してシリンダ数を 40 としたものが開発されて、これが IBM PC に採用されました。 ( 1D フォーマット ) 

5.25 型 FDD 用に 2HD フォーマットが開発された時、PC-9800 シリーズでは 8 型 FD の電気的特性を引き継ぎつつ 2HD を実装し、AT 互換機では IBM PC に採用された 1D フォーマットを拡張する様にして 2HD を実装したため、同じ 2HD でもフォーマットの仕様に違いが出来てしまいました。

このような違いがある為に、AT 互換機では PC-9800 シリーズで作成された 2HD フォーマットの 5.25 型 FD をそのままでは読み込む事が出来ないのです。有志などが作成したデバイスドライバーを使用することで読み込める事もありますが、読み込めない事も当然あります。

なお上記の技術的経緯は、もしかしたら開発室様の「色々な5インチFDDをAT互換機に付けてみる」という記事で詳しい解説が行われています。


PC-9821 のノート機に 5.25 型 FDD を接続する

この記事の執筆者は PC-9821 Ls12 を所有している事から、5.25 型 FDD を接続しようと考えました。

冒頭で謝意を示した方々にご指導を仰ぎ、結果として以下の図面のように接続すると 5.25 型 FDD を動かして、データの読込、2HD として媒体をフォーマットさせる事に成功しました。

図面一覧
回路の仕様 DXF 形式 PXF 形式

FDD インターフェイス変換基板回路図

DXF 形式

PDF 形式

改造の参考写真は「FDD インターフェイス変換基板回路図参考写真」に掲載していますので、そちらを参照して下さい。


PC-9821 のデスクトップ機に 5.25 型 FDD を接続する

先述した PC-9821 Ls12 での試験よりも以前に、PC-9821 V200 へ 5.25 型 FDD を接続できるか試験した事が有ります。

結果的には何とか動かす事が出来た事は覚えているものの既に当時の記録が失われている為、デスクトップ機に関する記事は推定を多く含みます。よって、実際に作業を行う際は他の資料との整合性を確認しながら作業される事をお薦めいたします。


材料

次に、PC-9821 のデスクトップ機に 5.25 型 FDD を接続する際に必要な材料を示します。

  • PC-9821 型番のうち、98 用 FD1231T 相当 34pin コネクタ搭載機 ( おそらく、Xa7 以降 ) 
  • VFO を無効に出来る、または VFO なしの 5.25 型 FDD ( 今回は、FD1155D を使用 ) 
  • 34 ピンのフラットケーブル ( FDD および本体との接続用端子を含む ) 
  • 本体が焼け落ちても、FD のデータが吹っ飛んでも泣かない精神

一番最後は、見落としがちですがとても大切な精神です。


工作

次に、PC-9821 のデスクトップ機に 5.25 型 FDD を接続する為の改造手順を示します。

PC-9821 のデスクトップ機へ
5.25 型 FDD を接続する際の改造手順
順序 説明文

1

34 ピン フラットケーブルを準備します。フラットケーブルは PC/AT 互換機用として流通している既製の端子付フラットケーブル ( 34 ピン FDD 用 ) で代用可能です。

但し、次のような条件を備えている必要が有ります。満たさない場合は、端子部分の結線替えなどが必要です。

  • 3.5 型 FDD 接続用の端子と 5.25 型 FDD 接続用の端子を備えている
  • 端子は、本体のマザーボードと接続する端子、3.5 型 FDD 接続端子、5.25 型 FDD 接続端子の順に並んでいる
  • フラットケーブルは、完全なストレート結線

2

フラットケーブルの不要な配線を切断する加工を行います。

この加工は 3.5 型 FDD と 5.25 型 FDD の間を繋ぐフラットケーブル上で行います。5.25 型 FDD を接続する端子の手前で、1、3、7、11、17、33 番ピンに繋がるケーブルは切断してしまいます。 ( 17、33 番ピンはそのままでも良い場合があります。 ) 

3.5 型 FDD と本体マザーボードとの間はそのままです。

3

フラットケーブルの加工が終わったら、マザーボードと 3.5 型 FDD の端子を接続します。

3.5 型 FDD の端子はいわゆる「反転ケーブル」と同じピンアサインになるように接続してください。既製品を改造する時は、端子を一旦分解して端子の向きを変更して組立ててください。

4

5.25 型 FDD の端子を接続します。


改造失敗例

改造に失敗している時に発生する現象について、その一例を次に示します。

改造失敗例
  • FDD を 1 台しか接続していないのに、複数認識する、FDD のヘッドやスピンドルモータの様子がおかしい

3.5 型 FDD コネクタをいわゆる「反転ケーブル」と同等の仕様に改造していますか ? 間違った状態で接続して FDD にアクセスすると、FDD がお亡くなりになるようですから、すぐに電源を切ってフラットケーブルを点検しましょう。

  • 3.5 型 FDD と 5.25 型 FDD のアクセスランプが同時に光る

もしかしたら、ドライブ番号の設定間違いと思われます。私のところでは、FD-55GFR で設定を調整している時にこうなりました。


おまけ

FD-1155D のジャンパピンの設定です。これなら必ず動くという訳では有りません。

FD-1155D のジャンパ設定表
ジャンパ
名称
PC-9801
型番
PC-9821
型番
※14
PC/AT
互換機
DX
※1
0
または
1
0
または
1
※15
0
または
1
※16
DCG
※2
1 1 2
USE
※3、※4
※5、※6
1 2 2
MON
※7
1 1 1
HDE
※8、※9
1 1 2
DEN
※10
1 1 1
RD
※11、※12
2 1 1
VC
※13
有効 有効 有効
  • ※1
    FDD のドライブ番号
    「0」が 1 台目
    「1」が 2 台目
    「2」が 3 台目
    「3」が 4 台目
  • ※2
    Ready信号と Disk change 信号の切替
    「1」が Ready 信号
    「2」が Disk change 信号
  • ※3
    Head Load 信号と IN USE 信号の切替
    「1」が Head Load 信号
    「2」が IN USE 信号
  • ※4
    「USE」ジャンパは通常、PC-9800 シリーズでは「1」に、PC/AT 互換機では「2」に設定する事を基本とするが、Head Load 信号を出力しない機種 ( PC-9800 シリーズでも FD1238T 相当品を搭載する機種 ) では「2」に設定しないと、FD1155D へはアクセスできない。他のヘッドロード機構を持っている FDD も、同じようにヘッドロード機構を無効にする必要が有る。
  • ※5
    ヘッドロード機構は元々、フロッピーディスクの摩耗を抑制する目的で設けられている。なので PC-9800 シリーズで有ってもアクセス速度を重視する場合、敢えて「USE」ジャンパを「2」へ設定する事が考えられる。また過去には、ヘッドロード機構のソレノイドの動作を解除して運用するユーザーも居たという。
  • ※6
    各所の資料では IN USE 信号という事になっているが、「USE」ジャンパを「2」へ設定してもアクセスランプが点灯しない場合も有るとの情報も考慮すると、製造ロットにより、内部で使用する信号の設定が IN USE 信号単体、Drive Select 信号と IN USE 信号の AND、Drive Select 信号単体の何れかになっている可能性がある。
  • ※7
    スピンドルモータの起動条件
    「1」が Motor 信号
    「2」が Head load 信号
    「3」が Drive select 信号
  • ※8
    2DD 時のスピンドルモータ回転数
    「1」が 360 回転
    「2」が 300 回転
  • ※9
    2DD ディスクを読み込む本体の仕様に依存する。国内では一般的に PC/AT 互換機を含め 300 回転だが、PC-9800 シリーズでは 8 型 FDD との互換性を考慮したのか、360 回転である。
  • ※10
    2HD と 2DD モードの切替
    「1」が Density 信号による切替
    「2」が High Density 信号による切替
    「3」が 2HD 固定
    オープンが 2DD 固定 ? 
  • ※11
    VFO 回路の有効、無効
    「1」が無効
    「2」が有効
  • ※12
    「RD」ジャンパは通常、PC-9800 シリーズでは「2」に、PC/AT 互換機では「1」に設定する事を基本とするが、PC-9800 シリーズでも FD1231T や FD1238T 相当品を搭載する機種では「1」に設定しないと、FD1155D へはアクセスできないと思われる。これは、本体側に VFO 回路が存在しているか否かにより異なる為である。
  • ※13
    終端抵抗の有効、無効
    オープンで無効
    ショートで有効
  • ※14
    PC-9821 シリーズのうち FD1231T または 1238T 搭載機。
  • ※15
    ドライブ番号は、FDD が標準で 1 台のみのノート機では 2 台目以降は認識出来ないため、必ず「0」とする。デスクトップ機の場合は、3 台目、4 台目に設定しても認識できない可能性あり。
  • ※16
    PC/AT 互換機で使用する場合は世代により異なるが、チップセットの仕様により台数に関わりなく全て「1」で固定する場合がある。

参考文献


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