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EPSON 98 互換機用 MD3541G を PC-9821 で使用する


もくじ

はじめに

今回、キヤノン電子株式会社製 FDD である MD3541G を PC-9821 で使用できるか実験を行いました。実験に使用した本体は PC-9821 Ls12 です。

実験の結果、基本的には使用出来る事が分かりましたが、使用にあたり変換基板の準備が必要だと分かりました。以下に、その内容を記載します。


変換基板

最初に用意するのは変換基板です。変換基板は「PC-9821 に 5.25 型 FDD を接続する」に掲載している「FDD インターフェイス変換基板回路図」を元に図面を一部変更し、34 ピン端子のうち、1 番ピンの 360/300 信号はどこへも接続せず、2 番ピンの Density 信号を反転させます。


ヘッドロード機構について

変換基板では同時に、FDD 内部のヘッドロード機構 ( FD アクセス時以外は、ヘッドをディスク表面から浮かして、ヘッドやディスクの摩耗を抑制する機構 ) への対策を行います ( Ls12 は Head Load 信号を持たず、MD3541G を接続する場合は、何らかの方法でヘッドロード機構を稼働させる必要が有ります ) 。

こういう時は、超簡易的な処理方法として 34 ピン端子の中に有る Head Load 信号ピン ( PC-98x1 においては 4 番ピン ) を GND へ接続する事で、ヘッドを強制的にディスクへ接触させる方法があります。詳細はもしかしたら開発室様の「色々な5インチFDDをAT互換機に付けてみる」という記事を参照して下さい。

しかし、この方法を手元にある MD3541G へ実際に適用してみた所、動作しない訳では無い物の、FD 挿入時または交換時に Head Load 信号の状態をリセットしないと、ヘッドロード機構どころか FDD 自体が正常に動作しない ( アクセス拒否になる ) 事が判明しました。

実験時は仮設でしたので、手動で Head Load 信号ピン ( PC-98x1 においては 4 番ピン ) を、その都度切り離してリセットするという原始的な方法で回避しましたが、常用する場合はもしかしたら開発室様の「色々な5インチFDDをAT互換機に付けてみる」という記事に掲載されている Drive Select 信号と Motor ON 信号から Head Load 信号を生成する方法を試してみてください。


保守点検時の注意点

FDD 本体ですが、MD3541G についてはドライブ番号の設定が必要な程度で、正常な個体であればそれ以外に特別な改造は必要ありませんが、保守点検を行う場合は、いくつかの注意点があります。以下に、注意点の概要を記載します。

MD3541G 保守点検時の注意点
参考写真 説明文

参考写真-1

FDD 全体。FDD ユニットを上部から見て、金属枠の中に FDD 本体と FD 挿入口の反対側の位置に変換基板が設置されていて、ふたつの部材間は FFC で接続されています。

参考写真-2

銘板の拡大写真。銘板のシールは型番の「MD3541G」という表記以外に、「K-63692-02」という表記も有ります。いわゆる P/N と思われます。

参考写真-3

変換基板の端子実装面。本体と変換基板の間を繋ぐ配線はフラットケーブルを用いますが、変換基板への接続はカードエッジ型の端子を使用します。またドライブ番号は変換基板上のジャンパで設定しますが、番号は DS0 から DS3 まで設定可能です。

参考写真-4

変換基板の端子実装面とは反対側の面。FDD 本体側の端子は 26 ピン端子ですが、一般的な 26 ピンタイプの FDD 端子のピンアサインと比較すると、若干入れ替わっています。詳細は「国産電算機のピンアサイン」に掲載しています。

参考写真-5

FDD 本体の上側の蓋を外した状態。この FDD を分解する際は、後年に製造された各社の 3.5 インチ FDD と比べると少しコツが必要ですので、ポイントとなる部分を順番に記載します。

なお、後年に製造された各社の 3.5 インチ FDD を分解する場合は、参考写真 6 から 11 までの工程を省略出来る事が少なくありません。

参考写真-6

分解する場合、まずは FD 挿入口とは反対側にあるシークモーターの電源線と、ヘッドロード機構のソレノイドへ繋がる制御線を端子から取り外します ( この工程に関しては FDD 内部を破損させる確率を下げる為、出来るだけ上側の蓋を外す前に行う事をおすすめします ) 。

参考写真-7

次に、上側と下側の二種類に分かれている FDD 内部の制御基板のうち、上側にある制御基板を固定しているねじを取り外します。

参考写真-8

FDD 中央部よりも FD 挿入口寄りの場所に有る、横渡しの金具 ( 梁 ) を取り外しますが、この金具は上側にある制御基板の支持金物の役割もしている関係上、乱暴に扱うと制御基板を破損させますので注意してください。

横渡しの金具は最初に、FFC がある方から取り外します。

参考写真-9

写真で拡大した部分を取り外すコツは、最初にクリアランスの分だけ上へ持ち上げてから、FD 挿入口とは反対の方向へスライドさせます ( 写真はスライドさせた後です ) 。

参考写真-10

今度は FDD 本体の金属枠から少し浮き上がる程度まで持ち上げたら、先ほどとは反対側の方向へスライドさせると、金具を取り外す事が出来ます。

参考写真-11

金物を取り外すと、上側にある制御基板が多少は自由に動かせる状態になります。

この状態となったら、取り外した金具のすぐ傍にある FFC のうち、下側の制御基板へ繋がる白い方の FFC を取り外し、次いで上側にある制御基板に接続されているトラック 0 センサーのフラットケーブルを取り外します。 ( FDD 本体の金属枠と制御基板の隙間に、ピンセットを突っ込んで取り外すと良いでしょう ) 

本来であれば、更にヘッドへ繋がる FFC も取り外した方が作業性は良いのですが、FFC を傷付ける危険性が高いため、私はヘッドへ繋がる FFC へ余計な張力を与えないよう注意しながら、基板を FDD 本体の金属枠よりも外側へ仮置きしました。

参考写真-12

FD を固定する金具は、下側、上側、FD 挿入口とは反対側の三種類に分かれている金具のうち、FD 挿入口とは反対側の金具をピンセットなどで押さえながら下側の金具を奥へ押し込むと、上側の金具の取り外しが可能になります。

上側の金具を取り外す際、引っ掛けるようにして設置されているヘッドロード機構の金具や、ヘッド本体を変形させないよう、注意してください。

注意点として、MD3541G の場合は FD 挿入口とは反対側の金具がトラック 0 センサーのベース部分に接触するまで移動させないと分解できない為、センサーに与える衝撃が最小限になるよう、注意してください。 ( このセンサーが動いてしまうと位置調整が必要になり、調整に必要な機器が無いのであれば事実上、FDD が使用出来なくなります ) 

参考写真-13

後年に製造された各社の 3.5 インチ FDD では余り見かけませんが、FD を固定する上側の金具には合成樹脂製の筒が取り付けられています ( おそらく、滑りを考慮しての事でしょう ) 。この部品は分解時、外れて紛失しやすいので保管状況に注意を払う必要が有ります。

参考写真-14

万が一紛失した場合、そのまま組み立てても金具が正常に動かないので FDD を使用する事ができません。代用品が必要になりますが、MD3541G ではマックエイト製の絶縁用ブッシュ BS-3-1 を転用する事が可能です。 ( 写真では、左側が絶縁用ブッシュ、右側が純正品 ) 

絶縁用ブッシュが入手できない場合は、大よそ外径 4mm、内径 3mm の配管と、同じ種類の平板を用いて自作すると良いでしょう。

参考写真-15

絶縁用ブッシュを転用する場合、絶縁用ブッシュの方がベース部分に厚みがあるので、両側を絶縁用ブッシュへ変更する場合はクリアランスが狭まって、多少きつめとなる事に注意が必要です。必要に応じ、現物合わせでベース部分を削るしか無いでしょう。

参考写真-16

FD を固定する下側の金具を取り外す前に、作業を行いやすくする為、FD 挿入口とは反対側の金具に取り付けられているバネを、先に取り外します。

金具を取り外す時は、FD 挿入口とは反対側の金具をトラック 0 センサーのベース部分まで載るまで動かしても、特に写真右下の部分が引っかかりやすい為に簡単には外せません。

下側の金具を上手いこと前後左右させつつ、トラック 0 センサーには最小限の衝撃しか与えないよう、注意して取り外すしか有りません。

参考写真-17

最後まで分解した状態。電解コンデンサは上側にある制御基板に 16V47μF と 16V10μF がそれぞれ 1 個ずつ、下側にある制御基板に 10V10μF が 1 個設置されています。 ( 写真では、下側にある制御基板の電解コンデンサはヘッドロード機構の金具の陰に隠れています ) 

10μF の物は特にサイズに注意しないと物理的に納まりませんが、下側にある制御基板の電解コンデンサは、基板を取り外してしまうとトラック 0 センサーの位置調整が必要になる為、事実上交換は困難でしょう。


Density 信号について

EPSON 98 互換機用の FDD の場合、Density 信号をそのまま使用する場合と反転させるあ場合と有りますが、MD3541G に関しては FDD 自体は反転させる必要は無いものの、FDD と本体の間に接続される変換基板上で反転が行われており、本体側は反転させる必要があります。

なぜこのような違いが有るのか、そしてどの FDD の場合に反転させる必要があるのかの全容は不明ですが、特定の FDD については工作室の記憶様の「エプソン98互換機本体−内蔵FDD対応表」および「エプソン98互換機の内蔵FDDのDensity信号」という記事を参照してください。


おまけ

余談ですが、参考写真を元に合成樹脂製の筒の材料となる配管を手配する場合、その寸法の表記の仕方は種類や規格により異なりますので、仕様書をよく確認する必要が有ります。確認しないと後で失敗する、という時の実例を示します。

  • 同じ金属管でも、電気設備で用いる厚鋼電線管と薄鋼電線管 ( 何れも JIS C 8305 ) は、いわゆる呼び径でサイズを表していますが、同一の数値でも厚鋼電線管では近似的な内径を指すのに対して、薄鋼電線管では近似的な外径を指しています。
  • 同じ樹脂管でも、給排水衛生設備で用いる架橋ポリエチレン管 ( JIS K 6769 ) と水道用ポリエチレン二層管 ( JIS K 6762 ) は、これも上記と同様に呼び径でサイズを表していますが、外径の基準寸法は同一の数値でも、内径は異なります。
  • 一般構造用炭素鋼鋼管 ( JIS G 3444 ) は JIS 規格を読めば分かりますが、呼び径ではなく外径と厚さを組み合わせた表記になります。
  • 全く同一種類かつ呼び径の配管でも、JIS 規格品と ANSI 規格品では僅かに寸法が異なるケースが有ります。

参考文献


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