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筐体を接着したい ( 調達編 ) 


もくじ

はじめに

Special thanks!!!

この記事の一部は、にが HPのにが様、うみゅのゆうくん様のご指導、ご協力により完成しました。ご指導、ご協力してくださったお二人に、感謝の意を表します。

FM TOWNS SN の電解コンデンサを交換する為に筐体を分解したところ、ねじ穴の金属部品を固定する合成樹脂へ亀裂が入っている事に気付きました。

亀裂の外観を観察する限り、接着剤を使って補修すれば良い水準でしたが、接着性能を確実に発揮させたい場合、接着剤は適切な製品を選定して、下地処理を確実に行う必要が有ります。この記事は接着剤に関する忘備録です。

紙や木材から、コンクリートやガラス、金属、合成樹脂など、接着したい部材に合わせて多種多様な接着剤が有りますが、今回の記事では金属と合成樹脂に焦点を絞って記載します。

作業時、有機溶剤による中毒に注意が必要です。厳密には SDS を確認する必要が有りますが、最低限度の対応として外気との換気は確実に行ってください。体質的に薬品に弱い場合、VOC 対策を考慮した接着剤を選定すると良いでしょう。なお、エポキシ樹脂を使用する場合は、硬化する前の硬化剤による健康被害対策も考慮する必要が有ります。

また、火気の近くで使用してはいけません。有機溶剤に引火して火災になる危険性が有ります。

万が一火災が発生した時に初期消火できるか心配だ、という方は、「初期消火についての雑記」を参照してください。


接着できるの ? できないの ? 

接着剤は、接着する部材や用途に合わせて選定します。製造メーカーのウェブサイトに対応可能な部材、周囲環境の一覧表が掲載されていたりするので、それを確認すると便利です。特に素材が異なる部材を接着する場合は、一覧表で確認したほうが判断しやすいでしょう。

周囲環境として考えられる要素は温度や湿度、接着後の引張、せん断 ( 千切るような力 ) 、剥離、曲げ、割裂などの応力です。この他、特殊環境では油分や薬品、紫外線なども影響を与える事が往々にして有ります。

素材の中には、各種金属、ポリエチレンやポリプロピレン、ナイロン、シリコン、レジン、ポリアセタール、フッ素樹脂など、接着が難しい素材も有ります。

これらを接着したい場合は、専用の接着剤 ( セメダイン株式会社のスーパー X、PPX、コニシ株式会社の SU、GP クリヤー、東亞合成株式会社のアロンアルフア プラスチック用など ) を用いることで、強度は多少劣るものの接着する事が可能です。ポリアセタールについては、シアノアクリレート系接着剤の項目を参照してください。

塩化ビニル樹脂の場合、可塑剤が溶け出して接着不良を起こす場合が有る為、塩化ビニル樹脂へ使用できる事が明記された接着剤を使用した方が、良い結果を得られやすいでしょう。


具体的な種類

接着剤には様々な種類が有りますが、この記事では一般的に金属や合成樹脂用として用いられる接着剤を以下に示します。

接着剤の種類
分類 種類 製品の一例

溶剤形
接着剤

樹脂系溶剤形接着剤

「タミヤセメント」シリーズ、
「タミヤ リモネンセメント」シリーズ
「GSI クレオス Mr. セメント」シリーズ
「セメダイン ABS 用」

ゴム系溶剤形接着剤

「コニシ ボンド G クリヤー」
「セメダイン 速乾 G クリア」

水性形
接着剤

酢酸ビニル樹脂系エマルジョン形接着剤

「コニシ ボンド木工用」
「セメダイン 木工用」

反応形
接着剤

シアノアクリレート系接着剤

いわゆる「瞬間接着剤」のうち、水分で硬化する一般的な製品

光硬化型接着剤

「ガイアノーツ UV ジェルグルー」
「ウェーブ UV - 速硬 中粘度」
「高森コーキ UV ライトを当てると固まる不思議な硬化剤」

エポキシ樹脂系接着剤

「コニシ クイック」シリーズ
「セメダイン ハイスーパー」シリーズ

ホットメルト形接着剤

「太洋電機産業 ホットスティック」
「白光 メルタースティック」
「ロックタイト ホットメルトスティック」
「高儀 グルースティック」
「ボッシュ ボンドスティック」

次項から、接着剤毎の解説を記載していきます。


樹脂系溶剤形接着剤

いわゆる、溶剤系接着剤。

主に、スチロール樹脂や ABS 樹脂、塩化ビニル樹脂などに使用可能 ( 製品ごとに対応可能な合成樹脂が異なりますので、仕様書を読みましょう ) で、僅かに樹脂を溶かす事で接着するタイプの接着剤なので強度的には優れていますが、慣れないと扱いにくく感じるかも知れません。

模型用として販売されている製品は一般にスチロール樹脂用で、ABS 樹脂は専用の製品が必要になります。但し、スチロール樹脂用でもアセトンが主体の製品ならば ABS 樹脂も接着できる ( アセトンは ABS 樹脂を溶かす為 ) 可能性が有ります。事前に推測する事は個人レベルでは困難な為、廃棄する端材や見えにくい部分で試すほか有りません。

稀に、合成樹脂の筐体が割れたり不必要に溶けたりしてしまう事があるため、事前に目立ちにくい場所で試してから使用すると良いでしょう。また塗装面などに溶液を垂らしてしまうと、表面が溶けてまだら模様になって頭を抱える事になるので、取り扱いにはより一層の注意が必要です。

樹脂系溶剤形接着剤では溶剤の種類に関わらず、接着剤自体の粘度が低いもの ( いわゆる流し込みタイプ ) と粘度が高いものがあり、粘度が低いものは「亀裂の隙間へ浸透させて接着」という使い方が出来ます。使用されている溶剤にはシクロヘキサン系とリモネン系のものがあり、後者のほうが比較的、作業時の安全性で有利だと言われています。

塗装したり、継ぎ目の部分を平滑にする加工を行う場合、接着後、風通しの良い場所で数日間放置してから作業を行うほうが良いでしょう。溶剤が完全に揮発するまでは、肉眼ではほぼ分からない変形が徐々に進行している可能性が高く、その変形が完全に停止する前に加工すると後から変形して目立つおそれが有るので、その可能性を排除する為です。


ゴム系溶剤形接着剤

いわゆる、ゴム系接着剤。

PC 関連では、アクセスランプの LED や、導光用の透明部品の接着で用いると、良い結果を得られるでしょう。

樹脂系溶剤形接着剤と比べると、意図しない部分へ接着剤が流れ込む確率が低い事、後述するシアノアクリレート系接着剤で起きる、いわゆる「白化現象」が起きないなどの理由で部材の汚損を避けやすいので、模型では透明な部品に使用するケースが多いですね。その他、硬化後も比較的、柔軟性が有る事から、軟質の合成樹脂を接着する用途にも用いられます。

製品により異なりますが、接着剤を接着する部位の両面へ塗布し、規定された時間の間はそのままにして接着剤に含まれる溶剤をある程度、揮発させてから接着するという、いわゆるオープンタイムを挟んで接着する事が多いのが特徴です。


酢酸ビニル樹脂系エマルジョン形接着剤

いわゆる、木工用ボンド。

合成樹脂を強固に接着する事は困難だと思われますが、それを逆手にとって上手に使えば、後から分解可能な構造とする事も可能です。

溶剤が水ですので水分には弱いですが、その代わり水で薄めて使用する事も可能です。模型の世界では、水で薄めつつ界面活性剤として中性洗剤を数滴混ぜた物を、ジオラマ制作の際に重宝する事が多いですね。

なお、メーカーが「ホビー用」「手芸用」として販売している水性接着剤は、同じ系統の接着剤 ( 厳密には成分が異なると思われる ) です。


シアノアクリレート系接着剤

いわゆる、瞬間接着剤。

これも樹脂系溶剤形接着剤と同様、主にスチロール樹脂や ABS 樹脂に使用可能です。また粘度が低いものと高いものが有り、粘度が低いものは「亀裂の隙間へ浸透させて接着」という使い方が出来ます。

硬化するまでの時間が短い事から、仮止め時間が短く済むという点で手軽に使えますが、衝撃に対して弱い傾向にあるので、応力に晒される部位では少量を仮止めとして使用して、樹脂系溶剤形接着剤で完全に接着させると良いでしょう。

注意点は、硬化時に発生するガスの影響で接着剤を用いた周辺が白く汚損される、いわゆる「白化現象」が起きる事、一度に大量に使用したり布製品に染み込ませたりすると、表面積が大きい事による空気中の水分との急速な反応で、100 度近くまで発熱してヤケドするおそれが有る事です。

基本的に接着剤単体で使用する事が多いですが、接着が難しい部材を接着する際、付属している専用のプライマを用いる製品が有ります。

余談になりますが、FDD のヘッド、 CD または DVD もしくは Blu-ray などの光学ドライブのピックアップユニットのベース部分に使用されているプラスチック ( 正確な種類は不明ですが、ポリアセタールの可能性が有ります ) は、仕様書を確認する限りセメダイン株式会社の PPX または、株式会社タミヤの瞬間接着剤・プライマーセットでのみ接着が可能だと思われます。


光硬化型接着剤

光の照射により硬化する接着剤で、大きく分けると紫外線で硬化する製品と可視光線で硬化する製品に分類できます。

光を照射する事で化学反応が始まって硬化する特徴を持ちますが、紫外線で硬化する製品では紫外線が照射されない限り硬化しない製品のほか、紫外線が照射されなくても熱や湿気など他の条件でも硬化する製品も開発されている様です。

また、接着剤の主成分として用いられる物質はアクリル系やエポキシ系、シアノアクリレート系、それらをハイブリッドにした物など様々な種類が有る為、光硬化型の接着剤を使用する際は、他の接着剤以上に仕様書の確認が重要だと思われます。なお、シアノアクリレート系の場合は瞬間接着剤に分類される事も有ります。

一般に、速乾性の良さや硬化後の体積変化の小ささ、シアノアクリレート系の場合は白化現象が抑制されている利点が有る一方、紫外線や可視光線が届かない部分では接着剤が硬化しない、素材によっては紫外線の使用が困難である、表面に粘着質な部分が残りやすく埃などの付着に注意が必要、という欠点も存在します。

照射する光が紫外線、可視光線の何れの場合も、接着剤を使用した部分の照度や照射時間を適切に設定する必要が有るでしょう。設定が過大だと接着剤の表面のみ硬化して内部が十分に硬化しない、逆に過小だと完全には硬化していない状態になるおそがあります。


エポキシ樹脂系接着剤

今回紹介している中では、接着後の収縮が少ないでしょう。この特徴を生かして、パテとして代用する事が可能です。

エポキシ樹脂系接着剤は一液性と二液性の製品があり、二液性のものは使用時に混合する必要があります。混合時、指定された可使時間、割合、方法から逸脱すると、硬化不良の原因となり、汚損した部材の洗浄からやり直すハメになって、泣く事になりますので、指定された内容は遵守する必要が有ります。

なお、エポキシ樹脂系接着剤は他の接着剤と比べて剥離強度に劣る傾向が有る、とされています。


ホットメルト形接着剤

いわゆる、ホットボンド、もしくはグルースティックと呼ばれていて、加熱する事で液状に溶け、その後、冷却して常温になると固まる接着剤です。

主な原料は熱可塑性の合成樹脂で、無溶剤で安全性が高く無公害とされていますが、接着剤を高温で溶かすので作業時に注意しないと火傷する危険性は有ります。熱の観点では他に、接着部分の耐熱性に限界が有る、熱に弱い物の接着には不向き、長時間加熱し続けると接着剤が劣化しやすい、という特徴が有ります。

ベースとなる合成樹脂の種類は EVA ( エチレン酢酸ビニル ) 系やオレフィン系、合成ゴム系など様々で、種類毎に特性や用途が異なる事から各種材料に適用出来る一方、エポキシ樹脂系接着剤と同様に剥離強度に劣る傾向が有り、特に祖度が細かくてツルツルしている物では剥離強度に劣ります。

他の接着剤と比べれば保管条件の制約は少ないですが、接着剤を使用するには接着剤そのもの以外に専用の塗工機 ( アプリケーター ) が必要で、家庭用の塗工機としては形状がガン型の製品を複数のメーカーが製造しています。

塗工機そのものや塗工機と接着剤との組み合わせにより、吐き出した接着剤の糸の引きやすさ、液垂れのしやすさの程度は異なる様です。塗工機を購入する時は、最低でも使用する接着剤の軟化点を事前に把握しておきましょう。

糸を引きやすいと感じる場合の対策としては、塗工機の溶融温度の調整、作業場所の気温が低すぎる場合は気温を上昇させる、対象物と塗工機ノズルの距離や塗工機ノズル形状の変更、接着剤を低粘度品へ変更する事が考えられます。

そのほか、ガン型塗工機のトリガーの引き加減を調整しつつ、接着剤を吐き出し終わった段階で出来た糸は、円を描くよう ( それこそ、納豆と同じ要領 ) にして処理すると良い、という意見も有ります。

ベースとなる合成樹脂の種類にも依ると思われますが、硬化後も粘りが有るのでどこかへ盛り付けて細かい整形を行うのには不向きなものの、ナイフで切れる程度の柔らかさは有るので、隙間を埋めてから固めて余分なところを粗く削り取ったり、後で取り外すことを考慮する場合には使い勝手が良いと考えられます。

後から取外しを考慮した例として、にが HP 様の「松下 FS-A1Fの改造 ( 続編 ) 」で紹介されている、OLED の接着と穴埋めで使用した例が有ります。


具体的な使用方法

具体的な使用方法は「実施編」に記載していますので、そちらをご覧ください。


参考文献


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