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無線 LAN の反射板を作成する


もくじ

はじめに

巷では無線 LAN の感度を上げたり指向性を鋭くするために、反射板なるものを作成している方々がいます。この記事の執筆者もそれに倣い、製作してみました。


使用する材料

次に必要な材料を記載します。

使用材料一覧表
使用材料 説明文

金属板

今回の場合、電波を反射させる為の材料が必須です。金属であれば確実に反射させる事が出来るでしょう。

板厚について、特にシールドを考慮するなら厳密には計算して最低の板厚を求める必要が有る様ですが、とりあえずのお手軽工作なら台所に置いてあるアルミ箔を流用すれば良いでしょう。

今回はアルミ箔を使用しました。

金属板を
支える板

屋外へ設置する場合は耐水性を考慮したり風圧力や地震力で脱落しない様に計算を行う必要が有りますが、屋内へ置いておくので有れば何を使っても問題ありません。

今回は余り物のプラ板とスチレンボードを使用しました。

棒材

反射板を補強するのに用います。

接着剤や
ねじ

反射板の組立や固定に使用します。

接着剤を用いる場合、金属板やそれを支える板の材質に合わせて接着剤を用いる必要が有ります。選定方法については「筐体を接着したい ( 調達編 ) 」を参照して下さい。

この記事の執筆者の場合、手元に有った余り物の材料を使いましたのでアルミ箔をプラ板で挟んだ積層式としましたが、材料を買ってきて製作する場合は、アルミ板を買ってきて曲げ加工する方法も考えられます。但し、アルミ板の場合、接着やねじ止め、ハンダ付けはそれなりに困難が伴いますので注意して下さい。

なお、板についてはプラ板ではなくティシュペーパーのボックス部分を代用にする方法も考えられます。


設計と製作

各所の資料を参考に、反射板の曲線を記載した図面と、これの計算方法や注記を記載した特記仕様書を作成しました。

反射板 特記仕様書、平面図

無線 LAN 通信反射板 特記仕様書 ( PDF形式 ) 
無線 LAN 通信反射板 特記仕様書 ( Word形式 ) 
無線 LAN 通信反射板 平面図 ( PDF形式 ) 
無線 LAN 通信反射板 平面図 ( DXF形式 ) 

平面図の作図には、オートデスク株式会社の Auto CAD を使用しました。この CAD はは放物線は書けないのと、データの互換性を考慮して表計算ソフトでプロット地点を計算し、疑似的に放物線を作図しました。

反射板の製作手順は次の通りです。

反射板の製作手順
参考写真 説明文

参考写真
なし

最初に、先述した図面を紙へ出力します。図面を印刷する時は on scale で印刷してください。そうしないと、曲線が狂ってしまいます。

参考写真
なし

反射させる為の金属板を適切な大きさ ( 例えば、アクセスポイントのアンテナに合わせた大きさ ) へ切断します。

参考写真
なし

次に、反射させる為の金属板は曲線を印刷した用紙に合わせて曲げていきます。

アルミ箔を用いる場合は、プラ板を 2 枚用意してアルミ箔を中間に挟んで接着します。この時、反射板は曲線を印刷した用紙に合わせて固定できる様に、棒材などを用いて仮固定します。

参考写真
なし

反射板の曲げ加工まで終了したら、反射板が変形しない様に保護する為に板材で箱を作って納めたり、棒材で枠を作って固定します。

反射板の曲げ加工が面倒な場合、細かく切断した平板を用いて多角形を構成し疑似的に曲面を作り出す方法や、大きな平板をそのまま用いる方法も考えられます。

作成できましたら、無線 LAN 用のアンテナ感度計測ソフト、例えば、Network Stumbler や inSSIDer で感度を検査するとよいでしょう。精度を確かめもせずに設置すると設置すると、反射した電波同士が干渉したり電波が有らぬ方向へ反射したりして逆効果です。


法規制の参考

電波法違反ではないか、という質問を見かけますが、法令の条文を読んでいく限りは即座に違反する事は無いと思われます。次に、この記事の執筆者なりの解説文を掲載します。

なお、各法令の条文はこの記事を執筆した時点での記述なりますので、ご了承ください。

法令解釈の参考
項目 説明文

根拠法令

無線 LAN に関する根拠法令は電波法、電気通信法と、これらの政令、規則、告示等である。

用語の定義

電波法で最も基本的な用語の定義は、電波法二条に記述されていて、無線設備 ( 電波を利用して、符号を送り、又は受けるための通信設備 ) と無線設備の操作を行う者の総体が、「無線局」と定義されている。 ( 電波法第二条一号、二号、四号、五号 ) 

無線局の
扱い

一般に、無線 LAN は法令上、無線局としての免許状が不要な無線局として扱われ、その名称を「 2.4GHz 帯高度化小電力データ通信システム」や「 5GHz 帯小電力データ通信システム」と呼ぶ。 ( 電波法第四条 1 項三号、同法施行規則第六条第 4 項四号 ) 

技術基準

無線 LAN に限定して適用される技術基準は、無線設備規則第四十九条の二十に規定されている。この条文内には、近傍に電波を反射する物体を施設してはならない、という主旨の記述は見当たらない。

空中線

同条一号イに出てきた「空中線系」という単語を元に、無線設備全体に共通する条文が存在しないか確認する。 ( なお空中線系とは、一般に言うアンテナを示す。 ) 

「空中線系」の定義を確認すると、電波法施行規則第 1 項三十七号の「「送信空中線系」とは、送信装置の発生する高周波エネルギーを空間へ輻射する装置をいう。」となっている。

送信装置

遡って条文を読むと、同項三十六号に「「送信装置」とは、無線通信の送信のための高周波エネルギーを発生する装置及びこれに付加する装置をいう。」、同項三十五号に「「送信設備」とは、送信装置と送信空中線系とから成る電波を送る設備をいう。」と、送信設備に関わる定義が分かる。

当然のことながら、送信設備に関わる仕様は電波法第三十八条「無線設備(放送の受信のみを目的とするものを除く。)は、この章に定めるものの外、総務省令で定める技術基準に適合するものでなければならない。」の規程に従わなくてはならない。

結論

同条で指定している条文は、電波法に関わる各種法令全体であるが、何れの送信設備や空中線系に関わる条文(無線設備規則第一章第二節や、第二章第三節)を確認しても、近傍に電波を反射する物体を施設してはならない、という条文はない。

よって即座に電波法違反とはならない。

但し書き

ただし総務大臣が「他の無線設備の機能に継続的かつ重大な障害」を与えていると判断した場合、大臣が「必要な措置」を「命ずることができる」ので、総合通信局から指導を受けた場合は、速やかに指導内容に沿った必要な措置を行うこと。 ( 電波法第八十二条 ) 

上記には注意点があります。それは「反射板をアンテナにくっつけて施設してはいけない」ことです。くっつけるとアンテナを不正に改造したとみなされ、摘発される恐れがあります。

あくまで真下から見上げた時にお空が見える状態、つまりアンテナ本体から離して施設しなくてはなりません。


おわりに

余談ではありますが、無給電中継装置 ( 通信反射板とも。この記事にある反射板のそっくりさんです。 ) についていくつか種類がありますが、この無給電装置にはなんの申請もいらないと誤解されている方がおりますが、間違いです。

これは、電波法施行規則第二条第 1 項四十四号で「「無給電中継装置」とは、送信機、受信機その他の電源を必要とする機器を使用しないで電波の伝搬方向を変える中継装置をいう。」として、無給電中継装置も法規制に含まれるからです。

ですから、電波法関係審査基準に無給電中継装置の審査基準が載っていますし、そもそも建築確認申請が必要な場合があります。これは、建築基準法でいうところの「工作物」に該当するか否か ( 建築基準法第八十八条および第六条、建築基準法施行令第百三十八条第 1 項二号、三号。高さによっては第三十三条による避雷設備も必要 ) によります。

ただし、建築基準法については「国土交通大臣が指定するもの」については建築確認申請は不要という除外規定もあり、工作物に該当する物すべてが規制対象になっている訳ではありません。

具体的には、平成 23 年 9 月 30 日国交告第 1002 号および国住指第 1949 号に規定された「架空電線路用並びに電気事業法第 2 条第 1 項第 10 号に規定する電気事業者及び同項第 12 号に規定する卸供給事業者の保安通信設備用の柱」は、規制対象外です。

地域によっては前途に加え、さらに都市計画法 ( 例えば第五十三条第 1 項 ) の許可や景観法の届出などが必要な場合もあります。

気になる方は、総合通信局 ( かつては電波監理局や電気通信監理局などと言いましたね ) や、特定行政庁の指揮下にある所謂「建築主事」が居る部署 ( 官公庁で一般的に「建築審査課」とか「建築指導課」という名称の部署 ) にお聞きになってください。

そしてアマチュア無線家のみなさん、自前のアンテナ用の鉄塔を建てる時は、電波法はもちろん、建築基準法なども守りましょう。建築基準法に違反する工作物への取締もしっかり行われています。


参考文献

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