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筐体を塗装したい ( 実施編 ) 


もくじ

はじめに

Special thanks!!!

この記事の一部は、にが HPのにが様、うみゅのゆうくん様のご指導、ご協力により完成しました。ご指導、ご協力してくださったお二人に、感謝の意を表します。

塗料の分類など基礎的な事は「調達編」に記載していますので、そちらをご覧ください。


下地処理

部材は一般的に、塗装前の第一段階として酸化物や不必要なめっき及び塗装を除去する意味も含めて、塗装面を目荒らし ( 表面を均一にザラザラにする事で、食いつきを良くする事 ) すると、良い結果を得やすくなります。金属や合成樹脂の場合は、番手が 1000 番程度の研磨紙 ( 紙やすり ) で目荒らしするのが良いでしょう。

部材の目荒らしが完了したら、第二段階として油分や離型剤などを取り除く為に洗浄します。具体的な方法は以下に記載しますが、全ての金属や合成樹脂で同じように適用できるとは限らないので、条件に応じてアレンジしてみて下さい。

下地処理の手順
素材 説明文

金属

はじめに、研磨紙やワイヤーブラシ、希塩酸などを用いて、目荒らしと酸化物や不必要なめっき及び塗装の除去を行います。平滑度が重要な部分に研磨紙を用いる場合は、研磨紙を平たいものに巻きつけて作業します。

ただし、金属と使用するプライマの組み合わせによっては酸化皮膜を残す場合も有る為、この点は事前にプライマの仕様書を確認してください。

目荒らしが終了したら、離型剤や加工油などを除去して脱脂する為に、灯油や有機溶剤、専用の洗浄液が有る場合はそれで洗浄します。

続いて、中性洗剤で仕上げ洗浄します。脱脂後に仕上げ洗浄を行わないと薄い油膜が残る場合が有り、そうなると塗料の性能に悪影響を及ぼしますので、注意して下さい。

最後に、清浄な水を用いて洗い流して乾燥させて下さい。

合成樹脂

はじめに、研磨紙などを用いて、目荒らしと不必要なめっき及び塗装の除去を行います。

目荒らしが終了したら、離型剤や加工油などを除去して脱脂する為に、中性洗剤で洗浄します。

最後に、清浄な水を用いて洗い流して乾燥させて下さい。

溶剤を用いた方が脱脂を含め洗浄しやすいように考えるかも知れませんが、合成樹脂の表面を劣化させてしまうおそれがあるので、溶剤を用いても問題ない事が確認できていない限り中性洗剤を用いた方が良いでしょう。

金属の洗浄に関して、酸化した部分の除去では希塩酸 ( サンポール等 ) へ漬ける方法も有りますが、いくつかの注意点が有ります。詳細はセガサターンのパワーメモリー認識法を参照してください。

部材の洗浄が完了したら塗装する作業を行いますが、塗料の性能を発揮させる為には、作業手順を遵守する必要が有ります。


最初はパテかいやパテしごき

洗浄が終了したら続いて、キズやヒケなどを埋める為に不陸調整が必要な場合はパテかい ( パテを塗り付けて、平坦にする事 ) やパテしごき ( 余分なパテをしごき取る事 ) を行って、平滑になるように研磨します。

パテは先述したように、比較的浅いキズやヒケならラッカーパテ、それよりも若干大きめのキズやヒケはポリエステルパテ、大きな穴や割れの補修や造形する様な場合はエポキシパテを使用します。

パテの混合、またはパテかいを行う場合は、出来るだけ手袋をした上でヘラや竹串などを使って作業しましょう。特にエポキシパテは直接触ると、皮膚がかぶれてしまう事が有ります。

主剤と硬化剤を混合するパテでは、色が均一な状態になるよう十分に混合してから、ヘラなどでしごいて気泡を抜きます。なお、パテを取り出す際に保護フィルムなどが混入しない様に注意しましょう。

パテは内部へ気泡が混ざりこまない様に注意しながら、パテかいやパテしごきを行います。乾燥後に肉痩せした場合は、再度、パテかいとパテしごきを行います。

乾燥時間はどの程度が理想なのかを一概に書く事は出来ませんが、ラッカーパテを平滑度が重視される部分に用いた場合は、最低でも一週間程度は放置して乾燥させないと、後から肉痩せによるヒケが問題になる場合が有ります。

パテが完全に硬化したら表面を研磨します。研磨紙は空研ぎ ( 研磨紙のみで研ぐ方法 ) で番手が 400 番で荒削り、600 番で調整、1000 番で仕上げを行うのが目安です。1000 番超の研磨紙を用いた場合、塗装面の艶が出やすくなる代わりにパテや塗料の食いつきが悪くなって剥がれやすくなるおそれが有ります。

平滑度が重要な部分に研磨紙を用いる場合は、研磨紙を平たいものに巻きつけて作業する事は先述しましたが、曲面へ研磨紙を用いる場合は丸い物や指先に巻きつけて作業します。場合によっては研磨紙ではなく、カッターやデザインナイフを使っても良いでしょう。最後は塗装前の仕上げとして、洗浄して乾燥させましょう。


次に、サーフェイサの塗装

サーフェイサとは、

  • キズやヒケを発見しやすくする
  • パテでは処理しにくい、細かな擦りキズを埋める
  • 仕上げ塗装の食いつき改善や、発色具合の統一
  • 合成樹脂の厚みが薄い場合に光が透けてしまうのを防止

などを目的とした塗料です。使い勝手としては溶きパテと通常の塗料の中間ぐらいで、塗料と同じ様に瓶入りの製品と缶スプレーの製品が有ります。

かつてサーフェイサの色味は灰色が主流でしたが、現在は色付きの製品が有り、中には、実際の錆止め塗料の色味に調色してある製品まで存在しています。

模型の制作記事ではほぼ登場するサーフェイサですが、先述した目的が当てはまらない場合、使用する必要は有りません。模型でも鉄道や艦船などスケールモデルの場合は、あまり積極的には使われない印象です。

これは、サーフェイサは通常の塗料よりは塗膜が厚い為、塗装するとせっかく緻密に作りこんだディテールが潰れがちになる、エッジが甘くなってシャープさが失われやすい、という傾向が有る為で、スケールモデルの場合はこれを嫌ってキズの確認も灰色の塗料を塗装して確認する、という人が居るほどです。

サーフェイサには研磨紙と同じ様に番手が設定されていて、数字が大きくなるほど粒子が細かくなります。番手は 500 番、1000 番、1200 番、1500 番の四種類が有り、使用する時は研磨紙と同じ様に番手が小さい物で大まかに処理してから、番手が大きい物で仕上げます。

記事の冒頭で塗装が難しい素材はプライマを使用する事を記載しましたが、サーフェイサの場合はプライマの成分が混入してある製品が有りますので、塗装が難しい素材の場合はプライマ入りの製品を使用しましょう。

なお、プライマ入りのサーフェイサはプライマ単体と同様に、合成樹脂へ使える製品と使えない製品が有りますので、仕様書をよく確認する必要が有ります。


筆塗りで塗装する場合

いよいよ塗装を行いますが、塗装が難しい素材では一番最初にプライマを塗布します。プライマを塗装する際のコツは後述する筆塗りやスプレー缶による塗装を参考にしてください。

塗料は使用直前によくかき混ぜ、必要に応じて、こしわけを行ってください。塗料をかき混ぜる時は調色棒を使用しましょう。横着して筆でやると毛が抜けたり、抜けた毛が塗装面へ付着してしまう悲劇が起きやすくなるので、避けた方が無難でしょう。

なお、瓶入りの塗料を攪拌する為の攪拌球 ( 金属製の球 ) ですが、純正の瓶と攪拌球なら使用を保証しているメーカーも有れば、攪拌球自体の使用を保証していないメーカーも有ります。最悪の場合は瓶の底が破損して塗料が漏れてしまいますので、純正以外の組み合わせで使用するのは避けましょう。

また、容器内に隙間が無くなるまで塗料や溶剤を入れた状態で激しく振ると、これもウォーターハンマー現象 ( 給水設備で水栓や弁類の急激な閉鎖、ポンプの急停止などが原因で、給水管やその周りから「ゴン ! 」と音が聞こえるアレが有名 ) で瓶の底が抜けてしまう、との注意喚起をしているメーカーも有りますので、極端に乱雑な取り扱いは避けましょう。


塗料の希釈

塗料の粘度が丁度良い状態ならそのまま塗っても大丈夫ですが、粘度が高いなら塗料を希釈します。希釈する時は調色棒を使って塗料を塗料皿へ出して、スポイトで溶剤を少しずつ加えると、調整しやすいでしょう。

ごく稀に、塗料の展色剤 ( 別名、ビヒクル。顔料を均等に分散して付着させる成分 ) と顔料が分離して混ざらなくなる事が有ります。特にメタリック系の塗料ではその傾向が強く、溶剤を入れすぎない ( 入れすぎると分離する ) 、メタリック系塗料用の溶剤が有る場合はそれを使用する、スプレーガンで塗らない ( ノズルが直ぐに詰まる為 ) など対策が必要になる事も有ります。


下塗り、中塗り、上塗り

準備が整ったら塗装を行いますが、下塗り、中塗り、上塗りの色は、僅かずつでも色を変えて塗装すると良いでしょう ( 例えば、下塗りを青色、上塗りを浅葱色 ) 。これは、上塗りの塗り忘れ防止策です。

塗装する順番ですが、塗りにくい場所 ( 箱状の物なら、奥まっている場所、角の奥まった入隅部分 ) から順番に塗っていきます。本来ならば、塗料の発色を鑑みて明るい色から順番に塗装する事が原則であるとか、陰影や重厚感を強調する為に黒立ち上げ塗装の活用など考慮しなくてはなりませんが、慣れないうちはそこまで考慮しなくて良いでしょう。

なお、黒立ち上げ塗装とは、ベルギーのフランソワ・バーリンデン氏が編み出して 1980 年代に流行した手法が源流で、その後に越智信善氏や MAX 渡辺氏の手法が編み出された様です。

部材の色は複数に分かれているが同じ色で統一して塗装するという場合、上塗りの隠蔽力が弱いと考えられるならば、下塗りは隠蔽力が強い色とします。これは色が異なる素材で製作した部材へ塗装した時、上塗りの発色を均一に仕上げる為です。

塗装する時は一度に厚塗りしようとしては行けません。厚塗りをすると塗装面がダレたり乾燥後に塗膜が割れやすくなります。三回以上に分けて薄塗りすると失敗しにくくなります。

特に艶の状態でいわゆる「全艶」を狙う場合、下地処理の段階では 1000 番以下の研磨紙で空研ぎにとどめていた所を、塗装後、数日放置して塗膜を安定させてから 1500 番以上の研磨紙で水研ぎ ( 耐水の研磨紙と水で研ぐ方法 ) して再び塗装、という工程を何度か繰り返して、最後にコンパウンドで仕上げると美しく仕上げやすくなります。

道具は使い終わったら、余分な塗料を新聞紙などに擦り付けて、十分に落とします。次に溶剤で洗浄し、仕上げに中性洗剤で洗浄して水ですすぎ、乾燥させてから保管しましょう。

養生に使った新聞紙やウエスは使用したら、有機溶剤を十分に揮発させてから処分します。


スプレー缶で塗装する場合

スプレー缶での塗装も基本的な考え方は筆塗りの場合と同じですが、スプレー缶の場合にだけ出てくる事項を次に記載します。

先述しましたが、火気の近くでスプレー缶を使用しては行けません。慣れないうちに行うスプレー缶による塗装は、次の条件を満たす場所で行います。

  • 屋外
  • 無風、もしくは風が弱い
  • 近くに火気が無い
  • 噴射ガスが溜まらない ( 通気性が良く、かつ、地下室では無い場所 ) 

スプレー缶による塗装に慣れてきて、かつ、塗装ブースが用意できたら屋内で作業しても問題有りませんが、火気を遠ざける、スプレー缶を使用した後は塗料の溶剤や噴射ガスが抜けるまで十分に換気する、などの基本的な事は守りましょう。なお、一般的に噴射ガスは空気よりも重く、地下室の様な場所では換気していても滞留しやすいので特段の注意が必要です。

スプレー缶は、使用する前によく振ります。内部に金属やガラスの玉が仕込まれているので、振るとカラカラと音がする筈ですが、音がしない場合は顔料が沈殿している可能性が高いので音がするまでよく振ります。

初めて使うスプレー缶の場合は、事前に不要な新聞紙で試し塗りすると塗装する時の感覚を掴みやすいでしょう。

スプレー缶による塗装は、塗装面とスプレー缶を 150 mm から 250 mm 程度離して、スプレー缶を 300 mm / sec くらいの速度で移動させるのが、一つの目安です。その際、スプレー缶は塗装面と出来るだけ平行に動かし、部材の端で手を止めるのではなく一旦通り抜けてから手を止めると、端の部分でムラになるのを防ぎやすくなります。

塗装面とスプレー缶を離しすぎたり、スプレー缶を移動させる速度が速すぎると塗装面がザラザラになってしまいますが、これを逆手にとって塗装面を梨地 ( ザラザラした質感 ) に仕上げる方法として使う事も有ります。 ( いわゆる、砂吹き ) 

スプレー缶は使用し終わったら、逆さにして数秒ほどカラ吹きしましょう。これを行わないとノズルが詰まってしまい、再び使う事が出来なくなります。

養生に使った新聞紙やウエスは使用したら、有機溶剤を十分に揮発させてから処分します。


乾燥させるとき

塗装を乾燥させる際、気温が高すぎたり低すぎると有機溶剤の蒸発、塗料を硬化させる化学反応が妨げられて塗膜の形成に支障を来たしますし、湿度が高いと塗装面が「白くかぶる」おそれも有りますから、塗装条件は守りましょう。

もし明記されていない場合、塗装する時間及び乾燥、化学反応させる数日間の天候に関して、気温が 5 度以下、または相対湿度が 85 パーセント以上が続きそうならば、塗装を中止する事を推奨します。

余談ですが、モデラーの方々の中には食器乾燥機を有機溶剤の蒸発、塗料を硬化させる化学反応を促進させる為のドライブースとして活用している場合が有ります。もしも食器乾燥機を試す場合は、メーカーが保証できる使用方法ではないので自己責任で試してください。

マスキングテープを使用する際、直線の部分は使用する直前に切れ味の良いカッターで切断した面を使用すると、綺麗な仕上がりを期待できます。


保管方法

保管する時は高温を避けて、涼しい冷暗所に保管しましょう。なお、有機溶剤が揮発して使用不能になる事も有りますので、出来るだけ短期間のうちに使い切る事を推奨します。スプレー缶の場合は噴射ガスが抜ける事による圧力低下なども有りますので、この点も注意しましょう。


おわりに

もしも塗料そのもの、もしくはそれらの使用法に関してもっと詳しく知りたい方は、PC を主体に扱ったウェブサイトではなく、プラモデルや鉄道模型を主体に扱ったウェブサイトで探すと、もっと詳細な解説が見つかると思われます。


参考文献


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