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工具に関する雑記 ドライバー編


もくじ

はじめに

この記事は元々、PC-9821 型番の機種で VFO 付 5.25 型 FDD をファイルベイに増設する配線へ使われている端子に関するメモ書きを作ろうと書き始めたものです。

そのような経緯から「電子部品の調達先に関する雑記」におまけとして掲載予定でしたが、ついでにアレもコレも、と書き足していたら記事が長くなりすぎたため、分割して単独の記事にしました。

記事は五回に分けて公開します。


電子部品を購入して工作する、もしくはいわゆるレトロ PC の保守を行う時、何はともあれ工具の準備も必要です。この記事では、備忘録を兼ねて出番が良くある工具に絞って記載しています。

記述している内容の水準は、入門者向けではなく初級者から中級者向けの内容になります。入門者は岩崎浩文様著作の「レトロマシン修理はじめの一歩 基礎編 レトロマシン修理マニュアル」を購入した方が良いでしょう。


ねじを回す

手始めに、ねじを回す為のドライバーを揃えましょう。JIS 規格では「ねじ回し」と記載されているドライバーは、先端形状に様々な種類が有ります。ここからは、電子機器の工作や保守でよく見かける形状に絞って記載します。

ドライバーで最低限必要なのはプラスドライバーとマイナスドライバーで、それ以外のドライバーは必要になった段階で買い足せば十分です。


プラスドライバー

ねじ頭の溝がいわゆるプラス形状のねじを回す時のドライバー。正式名称はプラスの溝が JIS B 1012「ねじ用十字穴」、JIS B 0201「ミニチュアねじ」、ドライバーが JIS B 4633「十字ねじ回し」となっています。

このタイプは先端形状が大きく分けて H 形、Z 形、S 形の三種類に分かれていて、H 形、Z 形はね呼び径 M1.6 以上のねじ、S 形はねじの呼び径 M2 および小頭の M3 以下のねじで使用されています。

プラスドライバーの種類別一覧
形状 名称 説明文

十字穴付き
 ( プラス ) 

Phillips

JIS B 1012 では「H 形」と記載されている十字穴。元々は米国で開発されたもので、製造メーカーは JIS B 4633 に沿って PH などの記号を振っている事がある。日本国内は勿論のこと、他の多くの国でも Phillips が採用されているという。

Pozidriv

JIS B 1012 では「Z 形」と記載されている十字穴。元々は英国で開発されたもので、製造メーカーは JIS B 4633 に沿って PZ などの記号を振っている事が有る。主に欧州で流通しているが、日本国内でも欧州からの輸入品や欧州規格を適用して製造された製品で見かける。なお、Pozidriv は英国 European Ind. Serv. Ltd. 社の登録商標。

精密機器用

ねじの呼び径が 2 mm 以下の精密ねじに用いる。日本写真機工業規格 JCIS9-70「精密機器用十字ねじ回しビット ( 0 番ピット ) 」に準じる。

プラスドライバーを選ぶ時は、先端形状と大きさを確認して選定しますが、今回の様な電子工作の場合は PH 形の 1 番と 2 番、S 形 ( サイズは 0 番しかない ) 位を常備しておけば、大抵は対応可能です。スマートフォンなど小さな機器では00 番や 000 番などの小さいものが必要になる時も有ります。

但し、欧州で製造された機器を扱う場合は、着手前にねじのプラス形状の溝に斜めの溝が彫られているか否か、よく観察すると良いでしょう。

ねじに斜めの溝が有る場合、必ず先端が PZ 形のプラスドライバーを準備します。決して日本国内で一般的に用いられて居る先端が PH 形のプラスドライバーで回そうとしてはいけません。

これには理由が有り、先端が PH 形のドライバーで PZ 形の溝を持つねじを回そうとすると、正常に噛み合わないのですぐにカムアウト ( いわゆる、ねじをなめる ) を起こして、結果的にねじを外せない、固定できない状態になる可能性が有る為です。


マイナスドライバー

ねじ頭の溝がいわゆるマイナス形状のねじを回す時のドライバー。正式名称はマイナスの溝が JIS B 1101 にて「すりわり付き小ねじ」、ドライバーが JIS B 4609 にて「ねじ回し-すりわり付きねじ用」となっています。

マイナスドライバーは電子工作ではあまりドライバー本来の使い方をせずに、ツメの嵌め合いで組み立てられている筐体を分解する時に、ヘラの代用品として用いる事が多いでしょう。

稀に、溝がマイナス形状のねじを外すという本来の使い方をする時も有り、例えば 8 型 FDD として有名な FD1165A のフロントパネルのほか、5.25 型 FDD でもフルハイトサイズの FDD で部品を固定するのに用いられている事が有ります。

なお、ドライバーの先端形状は日本と欧州では若干異なります。日本で一般的なマイナスドライバーは先端がたがねの様な形状で、軸の丸棒よりも少し広がった部分が有ります。これに対し、欧州仕様のマイナスドライバーは先端と軸の丸棒が同じ幅 ( 規格としては、DIN5264 ) になっています。

その為、例えば欧州向けに製造された端子台のねじを回す場合、欧州仕様のマイナスドライバーを用いないと、ねじを最後まで回せない可能性が有ります。参考例として、独国の端子台メーカーの日本法人である、ワゴジャパン株式会社のカタログを参考文献で提示します。


トルクスドライバー

ねじ頭の溝がいわゆる六芒星形状のねじを回す時のドライバー。正式名称は六芒星の溝が JIS B 1015「おねじ部品用ヘクサロビュラ穴」となっています。

一般名称としてはヘックスローブやヘクスローブなども有ります。なお、トルクスという名称は米国 Acument Intellectual Properties LLC. 社の登録商標の様です。

形状として、ねじ頭が六芒星で凹になっている T 形、凸になっている E 形の二種類に分かれています。殆どは T 形なので気にする必要は有りませんが、自動車などで E 形が用いている事も有ります。

凹になっている場合、更にいたずら防止用の突起が仕込まれている事が有り、この様な時、ドライバーは突起に干渉しないタイプ ( 中央部に突起との干渉を避ける穴などが設けられているタイプ ) が必要になります。

余談ですが、米国 Acument Intellectual Properties LLC. 社が開発製造するトルクスに似ているねじは複数種類あり、先述したトルクス以外にトルクスプラスというねじ頭が凹んでいてペンタローブなどと呼ばれる、五角形または六角形の花形のもの、そのほかトルクスと酷似しているが全くの別物である Ribe CV のような紛らわしいものまで存在しています。

工場における生産ラインの自動化対応のねじとして、オーエスジーシステムプロダクツ株式会社の LH スティックスシステムシリーズが有ります。このシリーズには「ライン穴」と呼ばれるものが存在しますが、この中の「LS リセス」や「LX リセス」と呼ばれるシリーズならばトルクスドライバーを使用できると公表されているので、使用しても問題ありません。


ラインヘッドドライバー

ねじ頭が丸く、縁の部分へ溝が彫ってる形状のねじを回す時のドライバー。

先述した LH スティックスシステムシリーズに存在する、ラインヘッドと呼ばれるもので、これもオーエスジーシステムプロダクツ株式会社の製品です。

何度も扱うのであれば純正のドライバーを購入した方が良いですが、数回しか用いないのであれば、改造した似非ドライバーで代用する方法が有ります。参考文献に挙げた、にが HP 様の「ゲームキューブの修理と改造」を参照して下さい。


Y 字ドライバー

ねじ頭の溝が、いわゆる Y 字形状のねじを回す時のドライバー。

先述した LH スティックスシステムシリーズに存在する、マイクロスティックスと呼ばれるもので、これもオーエスジーシステムプロダクツ株式会社の製品です。


ソケットドライバー

ナットドライバーやボックスドライバーとも呼ばれています。このドライバーは例えば、D-Sub 端子の嵌合台を外す時に使用します。サイズは多くの場合、「対辺 5mm」が適合すると思われます。


おわりに

ねじを回す時、うっかりカムアウト ( いわゆる、ねじをなめる ) させてしまう事が有ります。これを防止する為には、ドライバーをねじへ押し付ける力を七割、回す力を三割に配分すると良いと言われています。

詳細は、参考文献を参照して下さい。


参考文献


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