試運転の資料館 | |||||
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This web site is only compatible with Japanese text. The English version of this article can be found on a separate page. PC-9821 に PC/AT 互換機用 FDD を接続する ( 概要編 )
はじめに実施編の資料は、2021 年時点でデファクトスタンダートとなっている PC/AT 互換機で使用されている 90mm ( 3.5 インチ ) フロッピーディスクドライブ ( 以下、FDD ) を、日本電気株式会社の PC-9800 シリーズへ接続することを前提としています。 この資料を他の機種へ適用する際は、「FDD の仕様の違い」や「信号の定義」の項目で記述する内容を参考に、適宜読み替える必要が有ります。 日本では法的規制 ( 計量法 ) により、取引や証明には原則としてヤード・ポンド法は使用できません。寸法や重量の表記には、一般的にメートル法が用いられています。資料を参照する場合は、特に長さと重さの単位に注意してください。 例えば、一般的に 3.5 インチフロッピーディスクと呼ばれている磁気メディアは、日本産業規格だと正式には「90mm フレキシブルディスクカートリッジ」 ( JIS X 6211 ) と呼ばれています。インチの使用を避けるために、「型」 ( 「ガタ」と読みます ) という単語を使用する場合があります。 その一例が「3.5 型 FD 」です。 PC-9800 シリーズとはPC-9800 シリーズは、1982 年 10 月から 2003 年 9 月まで日本電気株式会社が製造・販売した 16 ビットおよび 32 ビットのパソコンです。 系譜は、1982 年から展開された PC-9801 シリーズの機種と、1992 年から展開された PC-9821 シリーズの機種に大別されます。その他に派生した製品として、PC-98 や PC-H98、FC-98 などの型番を持つ機種も有りました。いずれも独自の設計が行われている為、IBM の PC/AT とは互換性が有りません。 全盛期だった 1987 年には、日本国内における 16 ビットパソコンの小売店頭販売数で 90% 以上の市場占有率を獲得しました。数え切れないくらいのソフトウェアが存在していて、CP/M-86 や OS/2、MS-DOS、Windows などのオペレーティングシステムも移植されています。 PC-9800 シリーズには互換機も存在していて、代表的な製品としてセイコーエプソン株式会社が 1987 年 4 月から 1995 年 7 月まで製造および販売した「EPSON PC シリーズ」が有りました。 PC-9800 シリーズは主に日本国内で販売されましたが、日本国外へも少数ながら PC-9801VM2E や PC-9801FC など、海外モデルが輸出されています。 PC-9800 シリーズと APCIII の関係性日本電気株式会社が日本国内で PC-9800 シリーズを販売していた頃、日本以外では IBM PC と部分的に互換性を有する、APC III を販売していました。 APC III は PC-9800 シリーズの初期モデルに似ているハードウェアを持っていて、ある意味、IBM PC と互換性を有する PC-9800 シリーズと呼べる存在でした。主に北米市場を狙ったものの、北米では PC/AT 互換機の台頭で成功しませんでした。代わりにアジア太平洋地域、特にオーストラリアで成功を収めた、と言われている様です。 FDD の増設や、故障した FDD の交換PC-9800 シリーズは製造終了から 20 年以上経過しています。その結果、FDD を増設しようにも純正の FDD を用意できないとか、元から取り付けられていた FDD が経年劣化に耐えられず故障した、という話を聞くようになりました。 1995 年 5 月に発売された PC-9821Xa7 以降の機種のうち、デスクトップ PC では FD1231T 相当の FDD が、ノート PC では FD1238T 相当の FDD が使用されています。
増設や交換の為に純正と同じ型番の FDD を入手しようにも、普通の量販店では販売されていません。インターネットオークションやフリーマーケットサービスなどで探せば見つかりますが、FDD の状態が良いほど金額が高くなります。 FDD が故障しても放置出来たら良いのですが、残念な事に PC-9800 シリーズは FDD を必要とするプログラムが多く存在する為、故障を放置する事は致命的です。 この状況を解決する為には、PC/AT 互換機用の FDD を改造して PC-9800 シリーズの純正の FDD の代用としたら良いのではないか、と考えて改造を計画しました。 今でこそ HxC Floppy Emulator や GoTek Floppy Drive Emulator の様な便利な物が広く使われていますが、私が PC/AT 互換機用の FDD を改造する計画を考え始めた当時、これらの便利な機械は日本では殆ど知られていない状況でした。 FDD の仕様の違いPC-9800 シリーズと PC/AT 互換機では、FDD の仕様が異なります。その違いの度合いは機種に依存するので単純に比較する事は出来ませんが、主な事項は次の通りです。
特に、灰色の筐体を持つノート PC の FDD は、PC/AT 互換機で見かける一般的な薄型 FDD とは物理的な寸法や、端子の形状が異なります。 デスクトップ PC やラップトップ PC ( ここでのラップトップ PC とは、ディスプレイ一体型の可搬式パソコンを指します ) では、特殊な寸法の FDD が搭載されている事はどちらかと言えば珍しいでしょう。その代わり、FDD のフラットケーブルの両端に有る端子を同一方向ではなく、逆方向に圧着している配線を使用する事は珍しく有りません。 この配線は俗に、「反転ケーブル」や、「反転コネクタ」と呼ばれています。
全体的な違いとして、PC/AT 互換機のうちデスクトップ機では、原則として Disk Change 信号を用いているのに対して、PC-9800 シリーズは全機種共通で Ready 信号を用いている、という違いが有ります。 その為、改造する FDD は Ready 信号またはそれと同等の信号を出力できる事が必要です。内部から Ready 信号またはそれと同等の信号を出力できない FDD では、大変面倒な改造を行うか、操作手順を誤ると暴走やフリーズしてしまうような不完全な改造を行う事になるでしょう。 また PC-9801 型番の中でも、1985 年に発売された PC-9801VM 以降の機種の大半には、FDD に VFO 回路 ( データセパレート回路 ) を内蔵しています。もしも対象の機種へ PC/AT 互換機用の FDD を組込む場合は、VFO 回路を別に用意する必要が有ります。 EPSON PC シリーズ ( PC-9800 シリーズ互換機 ) のうち、一部の機種では 34 ピン端子の中に電源ラインも含まれています。
フロッピーディスクのフォーマット形式が同一名称でも、PC-9800 シリーズと PC/AT 互換機では仕様が若干異なります。例えば、日本では 2HD、日本以外の多くの国では 1.2MB フォーマットもしくは HD と呼ぶ形式のフロッピーディスクを比較すると、次の様な違いが有ります。 PC/AT 互換機では、130mm ( 5.25 インチ ) フロッピーディスクが 512 bytes/sector,15 sector/track,80 track/surface、90mm ( 3.5 インチ ) フロッピーディスクが 512 bytes/sector,18 sector/track,80 track/surface です。 一方、PC-9800 シリーズはどちらの場合も 1024 bytes/sector,8 sector/track,77 track/surfaceが標準です。PC-9800 シリーズの仕様は、200mm ( 8 インチ ) FDD との互換性を考慮したのが理由、と言われています。 他にも、日本では 2DD、日本以外の多くの国では 720KB フォーマットもしくは DD と呼ぶ形式のフロッピーディスクを比較すると、アクセス方法にも違いが有ります。PC/AT 互換機ではディスク回転数 300rpm、転送速度 250kbit/sec です。一方、PC-9800 シリーズではディスク回転数の切替を避けて、ディスク回転数 360rpm、転送速度 300kbit/sec となっています。 その為、PC/AT 互換機用の FDD を改造して PC-9800 シリーズへ接続しても、一部の例外を除いて 2DD 形式のフロッピーディスクを扱う事は出来ません。PC/AT 互換機用の FDD は 2DD 形式と判定した場合、ディスク回転数を 300rpm へ固定してしまう事が多いためです。 上記に加えて、ヘッドロード機構の取り扱い方法の違いなども有ります。 ここでは簡単な要点のみを記載していますが、もっと詳しく FDD の経緯や技術的な部分を知りたい方は、「もしかしたら開発室」様の「色々な5インチFDDをAT互換機に付けてみる」という記事を参照すると良いでしょう。 信号の定義実施編に掲載している FDD の資料を他の機種へ応用する場合、問題になるのはピンアサインの違いと思われます。次に、各機種の FDD インターフェース部分のピンアサインを対比する一覧表を提示します。何れも、代表的な物のみを抜粋しています。
参考で、IBM PS/2 と Atari ST のピンアサインも記載します。
Drive Type ID の別表は、次の通りです。
Media Type ID の別表は、次の通りです。
PC-9800 シリーズの場合、ディスクの回転数を 360/300 信号、2DD 形式と 2HD 形式の切替を Density 信号で行います。その為、実施編に掲載している資料では PC/AT 互換機用 FDD の Density ( Mode Select ) 信号へ改造を行うよう図示していますが、他の機種へ応用するならこの改造は不要です。 逆に、FDD を Shugart Interface 相当へ改造する場合、34 ピン端子の 2 番ピンから Disk Change 信号を出力できるようにする改造が必要だと思われます。 補足 - 3 モード FDD とは ?90mm ( 3.5 インチ ) FDD が普及し始めた頃、PC/AT 互換機の 90mm ( 3.5 インチ ) FDD では 2HD ( 1440KB ) / 2DD ( 720KB ) の二種類のフォーマット形式に対応していました。一方、PC-9800 シリーズ用の 90mm ( 3.5 インチ ) FDD では 2HD ( 1232KB ) / 2DD ( 720KB ) の二種類のフォーマット形式に対応していました。 1980 年代後半の日本では、PC-9800 シリーズは圧倒的な市場占有率を獲得していました。その為か、日本で同時期に製造・販売された他のコンピュータ ( 例えば、X68000 や FM TOWNS など ) の FDD も、PC-9800 シリーズを意識した様な仕様です。 1990 年代になって、2HD ( 1440KB ) / 2HD ( 1232KB ) / 2DD ( 720KB ) の三種類のフォーマット形式に対応している、いわゆる「3 モード FDD」が登場します。PC-9800 シリーズのうち、PC-9801 シリーズは 1993 年 1 月以降に発売された機種、PC-9821 シリーズは 1992 年 11 月発売の初代の機種から搭載するようになりました。 PC/AT 互換機を含む他の機種では、いつから「3 モード FDD」を搭載したのか定かでは有りません。しかし、株式会社東芝の J-3100 シリーズ、IBM の PS/55Z シリーズでは 1990 年頃に登場した機種から搭載された、との情報が有ります。 「3 モード FDD」はハードウェア的に見た場合、PC/AT 互換機の場合はDensity ( Mode Select ) 信号で、PC-9800 シリーズは 360 / 300 信号で、2HD ( 1440KB ) / 2HD ( 1232KB ) の動作を切り替えています。 ソフトウェア的に見た場合、PC-9800 シリーズはオペレーティングシステム側が「3 モード FDD」に対応しているのか確認する必要が有ります。PC/AT 互換機の場合はオペレーティングシステムに加え、マザーボードの対応状況の確認、対応している場合は BIOS の設定や、デバイスドライバなど、様々な準備が必要です。 なお、2HD ( 1232KB ) のフォーマット形式に対応している「3 モード FDD」は、基本的に日本でしか使われていません。用語の意味そのものも、日本国外では理解されないと思われます。 具体的な使用方法は「実施編」に記載していますので、そちらをご覧ください。 参考文献
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