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PC-9800 シリーズ互換の EPSON PC シリーズはデスクトップ機からノート機まで揃っていますが、その中には PC-486PORTABLE という珍しい機種も有ります。
この機種は、寸法や重量で見ると令和五年 ( 2023 年 ) 現在だと Ultrabook に近い思想で設計されていて、2-in-1 パソコンのうちセパレート型やデタッチャブル型と呼ばれる方式の様に、液晶とキーボードを分離して液晶部分をタブレット端末の様にして使う事が出来る事も、特筆すべき点と言えます。
発売されたのは平成五年 ( 1993 年 ) 11 月で FDD を使用する事が出来ます。FDD は外付け型が純正で用意されていますが、内部の構造についてはあまり知られていません。今回、外付け FDD を入手出来ましたので、分解調査する事にしました。
PC-486PORTABLE の純正外付け FDD の分解調査記録 |
参考写真 |
説明文 |
参考写真-1 |
外付け FDD 全体。FDD 本体が納められた合成樹脂製の筐体は電線が直付けされていて、電線の先端に本体接続用の端子が取り付けられています。
外観で一般的な外付け FDD と大きく異なるのは、イジェクトボタンが筐体の前面ではなく上部にあることです。
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参考写真-2 |
FDD の裏側。型番等のシールは一切貼付されていません。
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参考写真-3 |
筐体の上部と下部、FDD を固定するねじは一見、外付け FDD の背後側の部分に合計 2 本だけ存在する様に見えますが、ゴム足の裏側にも合計 4 本隠れています。
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参考写真-4 |
ねじを外したところ。この状態では筐体も FDD も外れやすい状態になっているので、移動させる時は落下させないように注意して下さい。
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参考写真-5 |
上部の筐体には FD 挿入部のシャッター近くにツメがあるので、筐体を持ち上げる時はシャッター付近を軸にして回転させるように持ち上げるとツメを折らずに済むでしょう。
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参考写真-6 |
ツメを拡大したところ。
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参考写真-7 |
上部の筐体を裏返したところ。筐体中央部の刻印によると、筐体はポリスチレン樹脂製と思われます。
また、製造時期は平成五年 ( 1993年 ) 10 月から 11 月頃、つまり発売と同時期と思われます。
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参考写真-8 |
イジェクトボタンは筐体とは別の部品で構成されていて、簡単に取り外す事が出来ます。
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参考写真-9 |
本体接続用の電線は、筐体内部で金属製の部品を介してねじ止めされています。
FDD から FFC を取り外す時は、先にねじを取り外して筐体から変換基板を取り出したのち、FDD 本体と変換基板を持ち上げて取り外したのちに作業しやすい場所で作業した方が、FFC を傷めずに済むでしょう。
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参考写真-10 |
ねじを外したところ。
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参考写真-11 |
変換基板は下部の筐体にあるツメに引っ掛けてある状態なので、取り外す時はツメを折らないように丁寧に扱いながら取り外す様にします。
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参考写真-12 |
FDD を筐体から取り外す時は、アクセスランプ用の LED 素子を傷めないよう、一旦後ろへスライドさせるようにして動かしてから取り外す様にしましょう。
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参考写真-13 |
FDD を後ろ側へスライドさせたところ。
アクセスランプについて、一般的には筐体の表面へ透明な合成樹脂のカバーを設置して、その内側へ LED 素子を配置している事が多いのですが、この外付け FDD では、LED 素子本体が表側に直接見える状態なのが分かります。
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参考写真-14 |
LED 素子は FDD 本体の端子に刺さっているだけなので、取り外しが可能です。誤って取り外してしまった場合、LED 素子には極性が有りますので参考写真を元に極性を特定して復旧させて下さい。
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参考写真-15 |
筐体から FDD と変換基板を取り出したところ。
FDD の製造メーカーは EPSON ことセイコーエプソン株式会社、型番は SMD-1100、P/N ( 部品番号 ) はさきほど提示した参考写真から、SMD1140-303-07 と分かります。
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参考写真-16 |
FDD と変換基板を分離する為には FFC を取り外す必要が有りますが、FFC のうち FDD へ刺さっている部分は変換基板が傍にある状態だと外しにくいので、まずは変換基板から FFC を取り外すと良いでしょう。
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参考写真-17 |
FDDから変換基板を分離したところ。
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参考写真-18 |
FDD 上部のシールド板を取り外したところ。
一般的な外付け FDD と大きく異なるのは、ベースの金属製の枠と、ディスクを挿入した時に可動する金属製の枠、それらを連動させる為の金属製の部品をそれぞれ接続する為、4 個のばねが設置されている事です。
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参考写真-19 |
金属製の枠はディスクの有無により状態が変わります。こちらは、ディスクを挿入していない時の金具の状態です。
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参考写真-20 |
こちらは、ディスクを挿入した時の金具の状態。 ( ディスクのシャッターを開ける機構を、強制的に動かして撮影 )
中央上部に持ち上がっている金具が有りますが、筐体のイジェクトボタンを押すとこの部分を下へ押すことになり、結果、ディスクを吐き出す動作へ繋がります。
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参考写真-21 |
前面に設置されているシャッターのばね。ばねは金属製の枠から出っ張っている爪に引っ掛けられています。
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参考写真-22 |
シャッターを外したところ。
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参考写真-23 |
ベースの金属製の枠と、ディスクを挿入した時に可動する金属製の枠、それらを連動させる為の金属製の部品をそれぞれ接続する為の 4 個のばねですが、それぞれ長さや巻線の回数や径が異なります。
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参考写真-24 |
シャッターやばねを取り外した状態。この状態ならば、ベースの金属製の枠からディスクを挿入した時に可動する金属製の枠を分離する事が可能です。
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参考写真-25 |
ディスクを挿入した時に可動する金属製の枠からは、ベースの金属製の枠に取り付けられている合成樹脂製の部品を機械的に連動させる為の爪が出っ張っています。
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参考写真-26 |
連動する合成樹脂製の部品 ( ベースの金属製の枠に取り付けられている状態 )
今回の FDD では存在しませんが、別の P/N ( 部品番号 ) が割り振られている SMD-1100 では、メディア検出用スイッチの手前側にイジェクトボタンが取り付けられています。
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参考写真-27 |
先述した金属製の枠から出っ張っている爪と、合成樹脂製の部品を嵌め合わせるところ。分解時にそれぞれの部品の位置を記録しておき、組立時に位置を調整してから組み立てる必要が有ります。
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参考写真-28 |
ディスクを挿入した時に可動する金属製の枠を取り出したところ。
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参考写真-29 |
ディスクを挿入した時に可動する金属製の枠には、赤い合成樹脂製の部品が 4 個取り付けられています。
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参考写真-30 |
この赤い合成樹脂製の部品は簡単に外れるので、分解時は紛失しない様に取り扱いに注意しましょう。
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参考写真-31 |
電解コンデンサは、FDD 内部に 16V10µF が 2 個、35V470µF ( 品種は、ニチコン PY ) が 1 個取り付けられています。そのほか、変換基板に 16V47µF が 1 個取り付けられています。
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参考写真-32 |
電解コンデンサを取り外したところ。事前の予想通り、四級塩電解コンデンサの液漏れ被害が出ています。
なお SMD-1100 で電解コンデンサを取り外して基板の清掃を行う場合、制御基板をベースの金属製の枠から取り外すと各種センサー類の位置ズレが生じるおそれが有ります。
その為、裏側に取り付けられている絶縁用の保護シートのみ取り外し、制御基板は本体に取り付けたまま交換作業を行う方が各種センサー類の位置ズレを予防出来るでしょう。
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参考写真-33 |
清掃して新品の電解コンデンサを取り付けたところ。
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