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This web site is only compatible with Japanese text. FM TOWNS SN の PAD コネクタを交換する
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もくじ |
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事のはじまりは、FM TOWNS SN の入手当時にまで遡ります。
FM TOWNS SN を入手した当時、PAD コネクタ ( Dsub コネクタ 9pin オス ) の腐食が激しかったため交換しました。交換時、コネクタに添付されていた嵌合台 ( スペーサー ) をそのまま用いて固定しようとしましたが、ケースに干渉してしまったため、他のねじで代用することに。
この時に用意した Dsub コネクタはインチねじ仕様だったので、近所のホームセンターでインチねじを入手しようとしましたが、販売されていません。
普通ならば通販などを駆使して、適切なねじを用意して交換するところです。が、当時の私は何を思ったのか、ミリねじの M3 を代用すれば取り敢えず固定できる ! という軽いノリで強引に固定。
これが悲劇の始まりでした。
数年後、FM TOWNS SN の電解コンデンサを張り替える為に本体を分解していた時のことです。FM TOWNS SN では、シールド板と PAD コネクタはねじで固定されています。で、このねじを外そうとしたら、バキバキと異音が ( 滝汗
ねじが折れた訳ではありません。なんと、PAD コネクタが粉砕されてしまったのです。事態を飲み込んだ時、頭を抱えてしまいました。
ただ、コネクタが粉砕されても基板が割れなかったのは不幸中の幸いでした。一歩間違えば基板が割れていたでしょう。おそらく多層基板なので、割れると復旧不能です。
再び PAD コネクタを交換するにあたり、タップを用いてねじ切りをやり直す方法も検討しましたが、タップを所有していないことと、ねじ切り加工中に金具が変形する恐れがあったので、おとなしくねじを探すことにしました。
今回はねじ規格のおさらいと入手ルートの調査、おまけで特殊形状のドライバーと、余談でねじの締付けを管理する方法の調査も行いましたので、その備忘録です。
まずはねじの規格からです。細かい事を書き出すと混乱するうえに直接は関係のない部分が多くを占めてしまいますので、以下に規格名だけ簡単に書きます。
ねじ規格の一覧表 ( 抜粋 ) |
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国内で一般的に目にするねじは、この三種類になります。
このうち、ウィットワースねじ自体は現在の JIS 規格では廃止されていますが、一部、配管用ねじの規格として用いられています ( 具体的には、建設業で用いられている配管用炭素鋼鋼管 ( JIS G 3452、通称 SGP 白管や SGP 黒管などと呼ぶアレ ) 同士をねじ接合する際の管用テーパねじ ( JIS B 0203 ) や、これらの支持部材で使用 ) 。
日本国内では基本的にミリねじを使用しますし、インチねじの使用場所も限定されているのでそんなに混乱が起きないのですが、Dsub コネクタに関しては多くの場合インチねじを使用するものの、歴史的な経緯があってインチねじとミリねじが混在しています ( 例えば、シリアルポートは PC-9800 シリーズと PC/AT 互換機ではそれぞれミリねじとインチねじの違いが有る ) ので注意が必要です。
余談ですが、Dsub コネクタの製造メーカーによってはインチねじ No.4-40UNC 仕様、ミリねじ M2.6 仕様、ミリねじ M3 仕様が用意されています。なお、M2.6 仕様は PC-9800 シリーズなどで使用されていますが、ねじ規格自体は現在の JIS では廃止されている代物です。
今回、交換のために用意した Dsub コネクタは、No.4-40UNC 仕様です。ねじそのものの入手を考えた場合、本当であれば M3 仕様の物が入手できれば良かったのですが、私が探した限り、コネクタ本体が M3 仕様となっているコネクタは見つかりませんでした。
なおカタログ上ではミリねじ仕様を謳っていても、嵌合台ねじのメス側だけミリねじとしている場合があるので注意してください。
Dsub コネクタが No.4-40UNC 仕様ならば、どうにかこのねじを入手しなくてはなりません。
この場合、可能であれば PC/AT 互換機用の部品を流用するのが一番の近道でしょう。ただ条件によっては、長さ等が合わないかもしれません。その時は規格が分かっていれば通販で問い合わせるのが一番です。ただし、通販ではロット単位での発注でないと購入できない場合もあるので注意してください。
ねじの規格がさっぱり分からない場合、現物を持ってホームセンターやねじ専門店などの小売店で問い合わせるのも良いでしょう。ホームセンターで探すときは、専門業者向け商品の展開を強化している店舗 ( コーナンプロやスーパービバホームなど ) へ行った方が入手できる確率が高まります。
これは小売業と卸売業の間にある取引形態 ( 掛取引 ) や、それまでの取引実績 ( 掛取引を行うに十分な信用 ) などの影響で、どこのホームセンターで注文しても、必ず手に入る訳ではない為です。
ねじ専門店だと目的のねじを見つけやすいですが、その代わり個人を相手にしていない ( 二次卸や三次卸として専門業者向けに販売 ) 事もありますので、まずは個人も相手にしているかを確認しましょう。そしてねじ専門店へ相談したい場合は、定休日の確認を怠ってはいけません。
この記事の執筆者は結局、ホームセンターで No.4-40UNC を入手する事が出来ました。
FM TOWNS SN の電解コンデンサ交換後にコネクタも交換して No.4-40UNC を使って固定しましたが、最初の時点で横着をしなければ、無駄にコネクタの交換に時間を費やすことはなかっただけに何とも言えない気分です。
せっかくですので、ドライバー ( JIS B 4633 などでは「ねじ回し」と呼ぶ ) について触れておきます。
一般的に見かけるドライバーおよび、ねじの頭の形状はプラス、若しくはマイナスが比較的多いと思われますが、家庭用ゲーム機やスマートフォンなどを中心に、特殊形状のドライバーを必要とするねじが使われているケースが有ります。
例えば、PC Engine ではラインヘッドまたは LH などと表記される形状のドライバーを必要とするねじが使用されていますし、AC アダプタではラインヘッド以外に、トルクスなどの形状が用いられています。
特殊形状のドライバーが分からない場合、いきなり探しに出かけたりせずに工具メーカーのカタログ類を参照すると良いでしょう。参考文献に工具メーカーのカタログを提示します。
この情報を知ったとしても、個人レベルで有効活用できるかと言われると微妙では有りますが、ねじの締付けを管理する方法の概要に触れておきます。
ねじの締付けを管理する代表的な手法として「トルク法」と「回転角法」が挙げられます。これ以外の方法 ( トルクこう配法、測伸法、張力法、加熱法 ) もありますが、特殊な方法の為、特定の分野以外ではあまり用いられていないようです。
「トルク法」は、ねじを締付ける際の締付けトルクを管理する方法で、締付け作業時に締付けトルクのみ管理するので作業性に優れる反面、ねじの締付け力 ( 軸力 ) に大きなバラつきが生じやすい傾向があります。
これは締付け時のトルクが同一であっても、ねじ面や座面の表面状態や締付け速度などにより締付けに関する特性値が変化し、締付け力に誤差が出やすい為です。
「トルク法」を用いつつ、締付け力のバラつきを抑えたい場合は、ねじ若しくはボルト、座金、ナットなどを一組として締付けに関する特性値を規格化したうえで、施工手順や品質管理の手法を定める事 ( 例えば、建築の鉄骨工事で用いられる高力ボルトが挙げられる ) が行われています。
一方「回転角法」は、ねじと母材や被締結部材、もしくはナットとの締付け角度を管理する方法で、ねじをスナグトルク ( ねじと母材の座面を密着させるのに必要な締付けトルク ) で締付けたのち、ねじを規定の角度まで回転させる事で締付け力を確保します。
「回転角法」ではさらに「弾性域締付け」と「塑性域締付け」に分かれていて、「弾性域締付け」の場合、母材やねじの剛性が高い場合は誤差が出やすい為、「トルク法」と同程度の締付け係数 ( トルク法では 1.4 から 3.0、弾性域締付けでは 1.5 から 3.0 ) が設定されています。
「塑性域締付け」の場合は、ねじの締付けを行う際に降伏点を超えて塑性域まで締付ける事から、回転角の誤差による影響を受けにくく、高い締付け力を安定して確保しやすいという利点を持ちますが、ねじの降伏点を超えて締付け力を掛ける為、ねじの再使用は原則として不可能な事、ねじの延性が小さい場合は破断に対する注意が必要になってきます。
参考 - 弾性や塑性とは |
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文章中に出てきた「弾性」「塑性」「降伏点」とは、次の意味です。
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トルク法はその簡便さから、様々な場所で用いられています。回転角法のうち塑性域まで締付ける方法は、高い締付け力を安定して確保しやすいという利点を生かして、内燃機 ( 発動機、つまりエンジン ) の組立などで用いられ、この場合はボルトの伸びを 0.01mm 単位で管理しているようです。
何かの機器を製作した場合の基準となる締付トルクの決め方は、ねじの製造メーカーが提供している技術資料を参照して下さい。
所有している機器を整備する為に分解および再組立する時に、純正のサービスマニュアルが入手出来ない場合、大きな応力が加わる部位については事前に現状のトルクを計測して、再組立時の締付トルクを決定するのが良いかもしれません。 ( 大した応力が掛らない部位については、計測までしなくて良いでしょう。 )
対象となる母材や被締結部材を複数のねじで締付ける場合、締付け力を安定させるために対角線上のねじを順番に締付ける方法や、一次締め完了後に本締めを行う方法があります。
また母材と被締結部材の摩擦力で応力を伝達する場合は、部材の変形による摩擦力の減少を抑える為、片側から一列ずつねじを締付ける方法も考えられます。
ねじを締付ける最中にねじ若しくはボルト、座金、ナットなどが一緒に回転してしまう現象を共回りと言い、トルク係数の変動による締付け力の不安定化に繋がる為、重要な部位の場合はこれら一式を全て新品と交換した方が締付け力を確実に確保出来るでしょう。
ねじ締付け後、状態の確認を行った事を忘れない様に記録したい場合は、ねじへマーキングを行うと良いでしょう。
例えば座金を用いている時、一次締め完了後にねじの頭から座金、母材や被締結部材に至るまで一直線にマーキングを行い、その後、本締めを行って締付完了のマーキング ( 色を変えると分かりやすい ) を行うと、締忘れの有無だけではなく、ねじの回転量や座金の共回りも確認しやすく出来ます。
ねじを締付ける時は、座金やナットを逆使いしてはいけません。逆使いをしてしまうと、トルク係数の意図しない変動により、締付け力の不安定化に繋がります。
また JIS 規格のねじは、首下からの長さはナットなどの表面から 3 山以上確保できる呼び長さのねじを使用する事が原則です。これは、ねじの先端には「不完全ねじ部」があり、力学的に締付け力を十分負担できない事、JIS 規格上「不完全ねじ部」は 2 山以下となっている事がその理由です。
あまり無いと思いますが、ねじで締付けた母材や被締結部材へハンダ付けを行う場合、母材や被締結部材の変形によるねじの締付不良を防止するため、ねじの締付けを行ったのちハンダ付けを行うのが良いと考えられますが、熱応力によるねじの締付けに関する特性値が変化してしまう可能性がある為、事前に慎重な検討が必要です。
ねじのトラブルとして一般的に多いのは、ステンレス製ねじで比較的起きやすい過大な締付トルクによる「かじり」や「焼き付き」などの締付け不良、振動などによる緩みがあります。
この他に、ねじへ繰り返し振動や熱を与えた事による疲労破壊や、ねじへ侵入した水素による遅れ破壊 ( 静的疲労破壊。高力ボルトのうち、かつて製造されていた F13T、F11T で発生している事象が有名 ) があります。
基板を固定するねじなど、電気的な接続を考慮する必要があるねじは、機械的な接続と電気的な接続に違いがある事にも注意が必要です。これは、締付トルクを適切な値に管理していたとしても電気的な接触抵抗が低いとは限らない為です。
接触抵抗を低くする方法としては、ねじや母材、接合材の酸化被膜や塗膜などを事前に除去する、ばね座金や歯付座金などを適切に用いる、母材と接合材もしくは端子の間が、圧着した場合と同等の効果が得られるよう、片側に比較的柔らかい金属を用いて多少潰すようにして締付ける、などが考えられます。
参考文献
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