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This web site is only compatible with Japanese text. 機器の騒音対策について
はじめに最近はかなり改善されましたが、ひと昔前の電子機器は騒音に対する配慮が殆どなされていないのではないか、と疑いたくなるぐらい煩い機器が存在していました。 特に GD ドライブと冷却ファンが煩いドリームキャストなどは、典型的な例ではないでしょうか。比較的後期に製造された個体のうち、一部は冷却ファンの騒音が小さい個体も存在していますが、GD ドライブが煩いのであまり変わないように感じます。 今回は、ドリームキャストを試験的に低騒音化改造した時の資料を元に、内容を纏めました。 音の性質を決定する要素騒音を低減したいと考えるのであれば、まずは音の性質を知らなくてはなりません。音の性質を決定する要素は 3 つ有り、強さ、高さ、音色が組み合わさる事で音が出来上がります。 強さは音の圧力、つまり音圧 ( 単位は Pa、通常は対数によって変換した音圧レベル、単位 dB の方が使われている ) によって決まり、音圧が大きいほど強い音に聞こえます。高さは周波数によって決定し周波数が高いほど音程が高くなり、音色は音源の振動 ( 波形 ) によって決まります。 騒音を抑えたい場合、正式には最初に 3 つの要素がどのように絡み合っているのかを分析し、どの成分から抑えていくのか優先順位を決めて対策に取り掛かる事になります。 音の伝わり方音の伝わり方は、空気伝播音と個体伝播音に分かれます。 空気伝播音は空気を介して伝わってくる音、固体伝播音は硬い板などの固体を伝わってくる音を指します。具体的には空気伝播音が筐体内部から通気口を通じて出てくる騒音、固体伝播音は冷却ファンやドライブから筐体へ伝わっている音が代表的です。 空気伝播音の場合、回折、屈折、干渉という現象があり、今回の話に比較的大きく関係してくると思われるのは、回折と干渉です。回折は進行方向に壁などの障害物があっても裏側に音が回り込む現象の事で、高音域になるほど回折は起きにくくなります。干渉は、複数の音波が重なって振幅が変化する現象の事を指します。 これらの現象はとても厄介な現象のように感じるかもしれませんが、上手に活用することで、効果的な防音を実現する事ができます。 余談ですが、2 つの同一な強さの音が合成された場合、音圧レベルは 3dB 大きくなり、点音源からの伝達距離が 2 倍になると、6dB 小さくなります。 防音方法防音方法には大きく分けて、能動的な方法と受動的な方法があります。 能動的な方法はいわゆる「アクティブノイズコントロール」と呼ばれ、スピーカーなどを用いて騒音を打ち消す方法ですが、かなり難易度が高い方法です。 受動的な方法は何らかの方法を用いて音源からの伝達距離を長くすることで、騒音を低減する方法で、一般的にはこちらの方法が用いられます。単に距離を長くするだけでも効果がありますが、より効果を大きくする為に次の方法を併用すると良いでしょう。 遮音と吸音遮音とは音を漏らさないように箱や板などで音を遮断する事で、遮音に使う材料は透過損失の関係上、重いほど効果的である事が多いようです。映画館などで観覧席への扉が重たいのは、こういう理由があります。 吸音とは音を反射させないよう穴が開いた板と空気層を組み合わせた物や、ふわふわした材料で吸音率が高い物を用いて音を吸収する事です。 音を遮りたいだけの場合は遮音のみ行えば良いのですが、ドリームキャストのような機器の場合、通気口を塞ぐ事は流石に出来ません。例え強引に通気口を塞いで遮音のみ行ったとしても、内部で反響した音がすきまを通じて漏れてきて、あまり静かにはならないでしょう ( 隙間から漏れる音を側路伝播音と言い、決して無視できない影響があります ) 。 そこで遮音と吸音を組み合わせる事で、騒音の低減を図る事が出来ます。 騒音源ここまでは「音」について概要を解説してきましたが、では、騒音の音源にはどのような物が何があるのでしょうか ? 一般的には冷却ファンやヒートシンクの風切り音、ドライブなどの振動や、それに伴う筐体類の振動 ( 共振 ) が挙げられるでしょう。 筐体内部で十分なスペースが確保できる、筐体自身に十分な強度が備わっている場合は音源はそのままに防音を行う事も出来ますが、ドリームキャストのように筐体内部のスペースが限られていると十分な遮音や吸音は行えません。 ですから、そのような場合は第一に音源から発せられる騒音を小さくする事が優先です。比較的に簡単に行えるのは冷却ファンの外付け化を含めた、冷却機構の改造と考えられます。 この冷却機構に関することは様々な機器で問題になる共通事項だと思われますので、ここからは一旦、熱の話に入っていきます。 熱の伝わり方では、熱に関する事を整理していきましょう。みなさんがよくご存知なのは、熱伝導率くらいだと思います。実際、雑誌などでもその事が中心です。しかし熱伝導率は、熱伝達というものの一項目にしか過ぎません。 熱の伝わり方は、伝導、対流、放射の 3 つがあり、これをまとめて熱伝達というのですが、その中で伝導は、一つの物質内での熱の伝わりやすさを示す熱伝導率、固体と流体の熱の伝わりやすさである熱伝達率などの事を示します。熱対流は、空気などの流体内で熱が移動する事を示し、熱放射は、熱が電磁波となって移動する事を示します。 ヒートシンクの選定冷却ファンの騒音を抑えたい場合、ヒートシンクは製造時の物をそのまま利用して冷却ファンを交換する方法と、ヒートシンクと冷却ファンを交換する方法があります。 ヒートシンクを交換する場合は、次のような点に注意して選定すると良いでしょう。
1 番目を補足すると、例えば銅製ヒートシンクで表面にメッキを行っていない場合、表面が酸化すると熱伝達率は良くても総合的な熱伝達率は悪い数値になってしまいます。 2 番目を補足すると、例えばアルマイト処理を行ったアルミ製ヒートシンクで自然換気により冷却したい場合、輻射による放熱も考えると黒色アルマイト処理を選択すると良い結果を得られる場合があります。 これは理論上の話ではありますが、可能な限り黒くする事により光や電磁波を完全に吸収、放出できるとされている黒体という物質 ( 現実には存在しないのですが ) のような効果を期待できる事によります。 風道一般に通気口には角がないほうが圧力損失が小さくて良い、という事は知られていますが、無闇に穴を開けたり、風道が狭すぎても広すぎても良くない、というのはあまり知られていません。 無暗に穴を開けてしまいますとショートサーキットという現象を起こして、せっかく排気した熱を再び給気してしまいます。風道や通気口は狭すぎると風速が早くなりすぎて所謂「口笛を吹く」状態になりかねませんし、もっと状態が悪いと圧力損失が大き過ぎて給排気できない状態になります。 ヒートシンク自体は、放熱の邪魔になる空気境界層を極力薄くするためになるべく風速を速めたほうが方が良いのですが、騒音との兼ね合いを考慮すると程々にした方が良いでしょう。 実際の改造ここからは、ドリームキャストを試験的に改造した際に行った改造内容を記載します。 ドリームキャストから発生する騒音は、GD ドライブ、冷却ファンがそれぞれ単体で煩いという事、それが合成されて余計に煩くなり、さらに筐体内で音が反響して余計に症状を悪化させていると考えられます。 さらに悪いことに、内部の熱を逃がす為に通気口と風道、冷却ファンが存在していますが、給気部分と風道となる部分に問題がある為に、結果として冷却ファン単体の騒音も余計に大きくさせていると考えています。 理由は給気用の通気口とそれに続く風道が狭すぎて圧力損失が大き過ぎるため、冷却に用いている軸流ファンが本来の給気用の通気口以外からも「すきま風」として空気を引っ張っているようだ、と判断できるからです ( 筐体内部の汚れ、線香の煙を使った調査によりそのように判断しました ) 。 ですので、改善策として以下の改造を行いました。対象となる本体は初期型で、後期型には適用できません。後期型は冷却ファンを取り外すと起動しません。
結果的には参考写真 -1 や参考写真 -2 のようにヒートシンクを交換し、参考写真 -3 や参考写真 -4 のような外観に仕上がりました。 今回は新しい冷却ファンも軸流ファンを用いましたが、一般にシロッコファンの方が高く静圧を確保出来ますので、今回のように冷却ファンを風道に直結する場合はシロッコファンを用いたほうが有利な結果になるかもしれません。 ( 正確には必要風量と全体の圧力損失を求めた上で P-Q 線図を確認しないと結果はわかりません、あくまでも傾向です。 ) なお軸流ファンと給気用通気口の間を風道で繋ぐ際、断面を小さく変形させなくてはなりませんが、可能であれば風道の中心から片側 30 度、合計 60 度以内としてください。こうすることで必要以上に圧力損失が大きくなることを防げます。 おわりに冷却機構を改造した結果、冷却用の軸流ファンによる騒音は減少し、風量を十分確保できるようになった為か手で触っても分かるぐらい筐体裏側の表面温度が低下しました。 その後、GD ドライブの騒音も低減できないか検討を行っていたのですが、どうしても GD ドライブ内で発生するモーター音の反響が抑えられなかった為、最終的にはドリームキャストの外側に箱を被せるという荒業に出て解決を図ったのでした。 なお今回は測定自体を省略していますが、騒音測定を正確に行う方法について興味が沸いた方は、JIS X 7779「音響 - 情報技術装置から放射される空気伝搬騒音の測定」をご覧になってみて下さい。 |
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