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PC-9821 Ls12 のファイルベースについて


もくじ

はじめに

PC-9821 Ls12 には本体のほかに、フロッピーディスクドライブ ( 以下、FDD ) や CD ドライブ ( 以下、CDD ) を収めたファイルベースが付属しています。

このファイルベースは同時期に発売された Ls13 や Ls150 のほか、PC98-NX シリーズの AileNX AL20C に付属する物と酷似しており、外観上は相互に転用可能な雰囲気を醸し出しています。

Ls12 の液晶パネルを TFT 型の正常動作品と交換する為に AL20C を入手した際、ファイルベースも同時に入手しましたので、ファイルベースに違いはあるのか、またピンアサインはどの様になっているのか検証してみました。


さっそく比較

まずは、ファイルベースを比較できる写真の一覧表から。

ファイルベースの比較写真集
PC-98 用
ファイル
ベース
AileNX 用
ファイル
ベース
説明文

PC-98 用
外観

AileNX 用
外観

二つのファイルベースは、外観は殆ど差が無い。

強いて言えば、Ls12 用のファイルベースには型番らしき表示がない一方、AL20C 用の方はしっかり裏側に「AileNX」の表示が有る。

PC-98 用
内部

AileNX 用
内部

分解してみると、筐体についてはほぼ同じ構造。

ただし、本体の荷重を支える為と思われる補強用のゴム足の有無、金物の細かな形状の違いが存在する。

内蔵されているドライブのうち、FDD については型番が同じ FD1238T か若しくはその互換品が用いられている物の、AL20C 用ファイルベース内にある FD1238T は P/N から判断すると明らかに AT 互換機用の個体だった為、少なくとも、無改造のままでは相互に転用できそうに有りません。

工作室の記憶様の「PC/AT 互換機用 FDD の PC-98 での使用 ( 2 ) 」によると、FD1238T のロットによっては基板の改造 ( チップ抵抗の移設 ) で相互に転用できる様ですが、この記事の執筆者は今のところ改造に成功した事が有りません。

CDD については型番も異なっており、Ls12 では XM-1502B が用いられている物の、AL20C では XM-1602B が用いられています。


次に、端子のピンアサイン

先述した比較写真では FPC のパターンが異なりますが、本体とファイルベースを接続する端子のピンアサインが同じであれば、FDD や CDD 以外の部分は相互に転用できる事になります。

そこで、本体とファイルベースを接続する端子のピンアサインを調査してみました。結論としては、Ls12 も AL20C も、ピンアサインはほぼ同一と考えて問題なさそうな事が分かりました。

ファイルベース接続端子 ピンアサイン
※1
端子
規格
NEC 独自
端子
形状
参考写真-1
ピン
番号
信号名 ピン
番号
信号名
1 GND ( Frame )  51 Non Connected
2 Step Pulse
※2、※3
52 +5V ( FDD ) 
3 GND ( FDD )  53 Index
4 Write Data
※2、※3
54 +5V ( FDD ) 
5 GND ( FDD )  55 Drive Select 0
※2、※3
6 Write Enable
※2、※3
56 +5V ( FDD ) 
7 GND ( FDD )  57 Disk Change ?
8 Track 00 58 Non Connected
9 GND ( FDD )  59 Ready
10 Write Protect 60 不明
※4
11 GND ( FDD )  61 Motor ON
※2、※3
12 Read Data 62 Density
※2、※3
13 GND ( FDD )  63 Direction
※2、※3
14 Side Select
※2、※3
64 360/300
15 不明 65 +5V ( CDD ) 
16 不明 66 GND ( CDD ) 
17 不明 67 GND ( CDD ) 
18 不明 68 Non Connected
19 GND ( CDD )  69 Non Connected
20 Non Connected 70 Non Connected
21 Non Connected 71 Non Connected
22 Non Connected 72 Non Connected
23 Non Connected 73 Non Connected
24 Non Connected 74 Non Connected
25 Non Connected 75 Non Connected
26 GND ( CDD )  76 CSEL
※5
27 GND ( CDD )  77 GND ( CDD ) 
28 GND ( CDD )  78 GND ( CDD ) 
29 +5V ( CDD )  79 +5V ( CDD ) 
30 +5V ( CDD )  80 +5V ( CDD ) 
31 +5V ( CDD )  81 DASP-
32 CS1- 82 CS0-
33 DA2 83 DA0
34 PDIAG- 84 DA1
35 IOCS16- 85 INTRQ
36 DMACK- 86 IORDY
37 GND 87 DIOW-
38 DIOR- 88 GND
39 DMARQ 89 DD0
40 DD15 90 DD1
41 DD14 91 DD2
42 DD13 92 DD3
43 DD12 93 DD4
44 DD11 94 DD5
45 DD10 95 DD6
46 DD9 96 DD7
47 DD8 97 RESET-
48 GND 98 GND
49 Audio-R 99 Audio-L
50 Non Connected 100 GND ( Frame ) 
  • ※1
    CDD の部分については推測で記載している部分が有るので、現物を再度確認する事。
  • ※2
    Ls12 では、ファイルベース内部の FPC に 74HC244 が有り、さらに FDD と 74HC244 の間にはダンピング抵抗と思われる 47ohm のチップ抵抗が直列に挿入されている。
  • ※3
    AL20C では、FDD と本体が直結した状態になる。
  • ※4
    Ls12 の本体内部では GND へ接続されている模様。AL20C は不明。
  • ※5
    Ls12 のファイルベース内部では未接続だが、AL20C のファイルベース内部では CDD と接続している模様。この為、CDD との組み合わせによっては回路を切り離す細工が必要になる可能性が有る。

おまけ

Ls12 で使用されている CDD は、俗に薄型やスリム型などと呼ばれる高さが低い光学ドライブで、データを転送する信号の規格は ATAPI です。

せっかくですので、薄型かつ ATAPI な光学ドライブのうち、一般的に多く流通していると思われる、いわゆる「東芝コネクタ」のピンアサインも記載しておきます。

薄型光学ドライブ接続端子 ピンアサイン
※1
端子
規格
正式名称不明
 ( いわゆる「東芝コネクタ」 ) 
※2、※3
端子
形状
参考写真-2
ピン
番号
信号名 ピン
番号
信号名
1 Audio-L 2 Audio-R
3 GND 4 GND
5 RESET- 6 DD8
7 DD7 8 DD9
9 DD6 10 DD10
11 DD5 12 DD11
13 DD4 14 DD12
15 DD3 16 DD13
17 DD2 18 DD14
19 DD1 20 DD15
21 DD0 22 DMARQ
23 GND 24 DIOR-
25 DIOW- 26 GND
27 IORDY 28 DMACK-
29 INTRQ 30 IOCS16-
31 DA1 32 PDIAG-
33 DA0 34 DA2
35 CS0- 36 CS1-
37 DASP- 38 +5V
39 +5V 40 +5V
41 +5V 42 +5V
43 GND 44 GND
45 GND 46 GND
47 CSEL
※4、※5、※6
48 GND
49 Non Connected 50 Non Connected
  • ※1
    薄型光学ドライブは、Ls12 で使われている 12.7mm 厚のほか、9.5mm 厚、7mm 厚の製品が存在している。
  • ※2
    端子そのものは、日本航空電子工業株式会社の KX14/KX15 シリーズでは無いかと思われる。
  • ※3
    俗に「東芝コネクタ」と言われている端子以外に、「TEAC コネクタ」や、ThinkPad のウルトラベイ・エンハンスド・デバイスやウルトラベイ・スリム・デバイスの様な端子も存在する。
  • ※4
    ドライブの Master / Slave 設定に関わる制御を行う。ATA 標準では Low で Master だが、切替スイッチ等で論理を反転させているドライブや、設定が内部的に固定されているドライブもある模様。
  • ※5
    詳細は、TEAC が 2009 年 12 月頃に公開していた「Slim ドライブの CSEL 信号について ( Master/Slave 設定 ) 」を参照のこと。
  • ※6
    PC-9800 シリーズのノート機で用いられているドライブは、Master 固定で CSEL 信号は使われていない為、AT 互換機用の CDD を転用する場合は 47 ピンと GND を接続するなど改造が必要である模様。

おまけ その 2

ついでなので、薄型かつ ATAPI な光学ドライブのうち、PC-9821 Nw150 で使われている TEAC CD-316E や、PC-9821NR-C01 で使われている TEAC の CD-38E などで見かける、いわゆる「TEAC コネクタ」のピンアサインも記載しておきます。

薄型光学ドライブ接続端子 ピンアサイン
 ( ATAPI 用端子 ) 
端子
規格
正式名称不明
 ( いわゆる「TEAC コネクタ」 ) 
※1
端子
形状
参考写真-3
※2
ピン
番号
信号名 ピン
番号
信号名
A 将来用 B 将来用
C 将来用 D 将来用
E  ( KEY )  F  ( KEY ) 
1 RESET- 2 GND
3 DD7 4 DD8
5 DD6 6 DD9
7 DD5 8 DD10
9 DD4 10 DD11
11 DD3 12 DD12
13 DD2 14 DD13
15 DD1 16 DD14
17 DD0 18 DD15
19 GND 20  ( KEY ) 
21 DMARQ 22 GND
23 DIOW- 24 GND
25 DIOR- 26 GND
27 IORDY 28 CSEL
29 DMACK- 30 GND
31 INTRQ 32 IOCS16-
33 DA1 34 PDIAG-
35 DA0 36 DA2
37 CS0- 38 CS1-
39 DASP- 40 GND
41 +5V 42 +5V
43 GND 44 将来用
薄型光学ドライブ接続端子 ピンアサイン
 ( 音声用端子 ) 
1 Audio-L 2 GND
3 GND 4 Audio-R
  • ※1
    俗に「TEAC コネクタ」と言われている端子以外に、「東芝コネクタ」や、ThinkPad のウルトラベイ・エンハンスド・デバイスやウルトラベイ・スリム・デバイスの様な端子も存在する。
  • ※2
    エマティなリサイクル様のリサイクル掲示板の「汎用スレッド 2021 年 9 月 パート 1 」にて、「2.5 インチ HDD と同様の 2mm ピッチだった気がします。」とのコメントを、かかっくん様から頂いた。

参考文献


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